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「出る出る出島」が、
苦しみの現役から引退。
text by
服部祐兒Yuji Hattori
photograph byKYODO
posted2009/09/02 06:00
元大関で48場所は史上最長。その色白ぶりに、故鈴木その子から懸賞を出されたこともある
名古屋場所11日目、熾烈を極めた優勝争いの陰で、「出る出る出島」の愛称で親しまれた元大関・出島が現役引退、年寄大鳴戸襲名を表明した。
13年半に及ぶ出島の現役生活で、今も記憶に鮮明に残っているのが、10年前の名古屋場所千秋楽である。当時25歳、関脇だった出島は、名古屋の大空にどでかい花火を打ち上げた。7日目に横綱曙を豪快な掬い投げで裏返し。9日目の横綱貴乃花は、怒涛のハズ押しで尻餅をつかせる。出島の突進は、結氷を砕いて航路を開く砕氷船そのものだった。2横綱に土をつけた勢いは、千秋楽の優勝決定戦で集大成を迎えた。会場の愛知県体育館には出島の初優勝を後押ししようと、地元金沢から大応援団が駆けつけた。決戦を前に、そこを起点として会場全体に沸き上がった出島コールと手拍子は、相撲見物では異例中の異例だった。