テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
大谷翔平の偉業が「普通」になりつつある違和感…50号+5回無安打投球に、番記者はヘロヘロでも高揚した「ロバーツ監督も“MVPは一方的だ”」
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNaoyuki Yanagihara
posted2025/09/23 06:03
打っては50号ホームラン、投げては5回無安打の好投を見せた試合後、囲み取材に応じた大谷翔平
「Don't take it for granted.(当たり前だと思わないでほしい)」
エンゼルス時代のジョー・マドン元監督が大谷の二刀流についてこう口酸っぱく語っていたことを思い出した。18日付のスポニチは1面に打者・大谷の50本塁打、2面にPS進出時の外野出場の可能性、3面に5回まで無安打無失点の快投という3本立てで大展開した。記者室を出たのは午前2時40分。朝まで球場を清掃する清掃員ともすっかり顔なじみになり、「Good Night. See you.」と声を掛け、球場を後にした。ヘロヘロになるほど疲労感と、それに勝るに劣らない高揚感。"大谷取材"はこれだからやめられないのかもしれない。
“MVP論議”については…「一方的だ」
翌17日の3戦目。大谷は8回に2戦連発の51号ソロを放った。3連敗阻止に貢献し、地区優勝マジックも1つ減らして「8」へ前進。ナ・リーグ本塁打王争いの直接対決だった今回3連戦は初戦の1発にとどまったトップのシュワーバーを2戦目からの2発で猛追し、2本差に詰め寄った。
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試合後、私はロバーツ監督に「大谷選手とシュワーバー選手の本塁打王争いをどう見てますか?」と質問。すると、ロバーツ監督は「シュワーバーは何本打っているの?」と逆質問。「53本です」と答えると「いい争いになるだろう。ただ私は我々の選手(大谷)に賭けるよ」と笑っていた。直後に韓国メディアが3年連続4度目のMVP獲得についての質問を投げかけると、こうも断言した。
「彼が打席でやっていること、マウンドでやっていることを見れば、一方的だ。疑いようがない。ただ、投票者が飽きて正しい判断をしないなんてことがないことを願っている。本当に明らかなんだから」
ロバーツ監督も前夜に私が感じたことと、同じことを危惧していた。“投票者が飽きて正しい判断をしない”のはあってはならないことだろう。
ポストシーズン前哨戦は1勝2敗。順当に勝ち上がれば地区シリーズで当たることが予想され、ドジャースとしてはやや不安を残す結果となったが、大谷はこれ以上ないインパクトを残した。〈つづく〉

