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「大谷翔平に当てたから」ではない? 報復死球にドジャース監督が激怒した“日本人が知らない”「本当のワケ」…MLB“暗黙ルール”の本質とは

posted2025/06/20 17:02

 
「大谷翔平に当てたから」ではない? 報復死球にドジャース監督が激怒した“日本人が知らない”「本当のワケ」…MLB“暗黙ルール”の本質とは<Number Web> photograph by Getty Images

サンディエゴ・パドレス戦で右ふとももに死球を受け、痛みをこらえるロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平。その後も両軍による「報復合戦」は続いた

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一野洋

一野洋Hiroshi Ichino

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 実に4試合で両軍合わせて8つの死球が飛び交ったドジャースとパドレスの西海岸ライバル対決。大谷翔平も被害にあうなど、一触即発の雰囲気になっていたが、実はアメリカ野球においては「報復死球」は決して珍しいものではない。そのウラにはどんな文化が潜んでいるのか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》

 6月17日(日本時間18日)、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が受けた死球が、大きな波紋を呼んだ。ドジャース対サンディエゴ・パドレスの一戦、3回の打席でパドレス先発ランディ・バスケスの投じた93マイルの速球が、大谷の右太もも付近に直撃したのだ。ベンチには緊張が走り、ロバーツ監督は即座に球審に詰め寄り、激しい抗議の末に退場となった。

 問題だったのはこの大谷への死球が、この日パドレスの主力打者であるフェルナンド・タティス・ジュニアが受けた死球に対するパドレス側の「報復」に見えたことだ。実にこの4連戦では両軍合わせて8つの死球を記録するなど、西海岸のライバル同士による「報復合戦」の様相を呈することになった。

 報復死球は、MLBに長く根付く“アンリトゥン・ルール(Unwritten Rules)”の象徴だ。味方選手がぶつけられたら、次の回にやり返す。それは明文化されていないが、長く「野球の掟」として受け入れられてきた。

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 1970~90年代には当然のように行われ、乱闘すら珍しくなかった。ロジャー・クレメンス、ペドロ・マルティネス、ノーラン・ライアン、ドン・ドライスデールといったレジェンドもその流れにいた。投手同士が暗黙の了解で報復しあう文化は、ある種の美学とすら捉えられていた。

近年でもあった「報復投球の礼賛」

 実は近年でもその名残は残っている。2020年、ドジャースのジョー・ケリーがヒューストン・アストロズのサイン盗みに対する“私刑”を行ったことがあった。

 ケリーは前年に発覚したアストロズが行ったとされるサイン盗みの報復として、アレックス・ブレグマンとカルロス・コレアの2選手に対して頭部付近にボールを投球。コレアを打ち取った際にはケリーが相手を挑発し、両軍が飛び出して警告試合となった。

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