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「もうスクープ競争はやめてください」伝説の貴花田・宮沢りえ婚約会見から“似顔絵だけ”松井秀喜まで「なぜアスリートは結婚式を公開しなくなった?」
text by
近藤正高Masataka Kondo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/09 11:05
1992年11月27日、婚約発表会見に臨む貴花田と宮沢りえ(東京都千代田区・ホテルニューオータニ)
谷夫妻は2003年1月26日に婚約を発表、12月11日にパリの教会で挙式したのに続き、同月20日に東京・新高輪プリンスホテルで披露宴を行った。披露宴の模様はテレビでも中継されている。
婚約・結婚発表でも当事者がそろって会見を開くことが減っていく。潮目となったのは、2008年の松井秀喜の結婚あたりだろう。当時、MLBのニューヨーク・ヤンキースに所属した松井は3月27日、フロリダ州タンパのホテルでの単独会見で、元会社員の一般女性と前日に挙式したことをあきらかにした。とはいえ、相手が同席しないばかりか、名前も顔写真も一切公表せず、代わりに夫人の似顔絵(松井と彼の兄が1枚ずつ描いた)が披露されただけで、報道陣は戸惑ったらしい。
しかし、この手法はその後、球界をはじめアスリートのあいだに広まっていく。リオデジャネイロ五輪・女子柔道57キロ級の銅メダリストである松本薫も、2016年に料理人の男性との結婚を発表した際、やはり自筆による相手の似顔絵を披露した。最近では、プロ野球選手が一般女性と結婚するたび、プロのイラストレーターに相手とのツーショットによる似顔絵を描いてもらい、報道陣に公開するケースも目立つ。
そして豪華挙式は少数派に…
2010年代以降も、2017年にサッカー日本代表の長友佑都が女優の平愛梨と結婚式・披露宴を行い、サッカー界や芸能界などから約300人が出席したケースはあるとはいえ、豪華挙式はどちらかといえば少数派である。2012年にタレントの里田まいと結婚したプロ野球・楽天の田中将大も、マスコミへの発表は球団を通じて、ハワイでの挙式は彼女がブログで報告したのと、所属事務所を通じて夫婦連名でコメントしただけで会見は行われていない。
スポーツ界でも芸能界でも、ブログやSNSといった個人ツールによる結婚発表はすっかり定着した。ファンとしても、マスコミを通じてよりもSNSでの発表のほうが身近に感じられるのは間違いない。もちろん、スターの結婚はいまでも人々の関心の的とはいえ、一方で、いくら著名人でも私生活は守られるべきという意識も高まっている。その点では、ファンとスターの関係は成熟しつつあるともいえる。
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そもそも、私的なできごとが仕事の内容やイメージにつながることも多い芸能人とは異なり、アスリートにとって結婚はあくまでも私的なものにすぎない(結婚したことが心身に影響を与え、結果的にそれが成績につながってくるということはあるにせよ)。そう考えると、公表する必然性はないともいえる。しかし、今回、大谷翔平が囲み取材でいみじくも口にしたように、公表しなければしないで取材攻勢は強まるだろう。
大谷の場合、結婚をSNSで公表したのに続き会見を開き、話せることはすべて話すことで、これ以上は立ち入らせないという意志を強く印象づけた。言わば、アスリート側がメディアに振り回されるのではなく、逆にコントロールしていこうという態度を明確にしたわけである。このことは今後、多くのアスリートの範にもなりそうである。同時にメディアの側は、報道のあり方について否応なしに再考を迫られたことになる。これを契機として、メディアとアスリートが新たな形で、よりよい関係を築いていくことを期待したい。