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「自信満々なルーキーは褒めちゃダメ」な理由は?…ベテラン記者がキャンプで見た“ブルペン捕手”のすごさ「いい音で捕ればいいってものでもない」
posted2024/03/10 17:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
BUNGEISHUNJU
私は「流しのブルペンキャッチャー」と呼ばれることがある。
理由は、ある雑誌でそういう役回りをしていたことがあるからだ。
今は『野球太郎』という野球雑誌が、まだ『野球小僧』という書名で創刊されて1年ぐらいの頃、時のドラフト1位候補の快腕、剛腕の全力投球を、ブルペンに伺って私が捕球し、インタビューもして記事にする。そんな連載記事のタイトルが『流しのブルペンキャッチャーの旅』だった。
皆さんによく訊かれる「事の起こり」も、実はあらためて語るほどのことでもない。
2000年の秋の終わり、当時、高校球界No.1左腕と評されていた内海哲也投手(敦賀気比高)の、ごく普通のインタビュー取材に向かうことになっていた。その数日前、編集長との立ち話の折りに、私はたいした深い意味もなく、こんなことを口走ってしまった。
「内海って、どんなボール投げるんですかね。受けてみたいですね」
次の瞬間だ。
「安倍さん、それ面白いですね、やっちゃいましょうよ!」
たった3秒で決まってしまったこの企画が、コロナ以来回数は減ったものの、20年以上も続いているのだから、自分でも驚いている。
キャンプで気になる「ブルペンキャッチャー」の動向
おかげさまで、高校、大学、社会人の逸材たちを、ざっと250人近く。ドラフト1位候補ばかりにお願いしてきたから、その8割以上はプロ野球に進み、誰でも知っている大看板にのし上がった投手もたくさんいらっしゃる。
今をときめく大谷翔平投手をはじめ、メジャーに進んだのが菊地雄星、前田健太に澤村拓一、平野佳寿。12球団のエース格や抑えの切り札として奮投した投手たちも数えきれず、そんな中で私が「恐ろしかったボールNo.1」に挙げるとしたら、オリックスの新鋭・山下舜平大が突き抜ける。
いずれどこかで、そんな「思い出ばなし」をご披露する機会もあろうかと思うが、そういうわけだからキャンプ地のブルペンでも、もちろん投げている投手たちに興味津々なのだが、一方でどうしても受けている捕手のほうも気になって仕方がない。
キャンプ地のブルペンでは、選手登録の「捕手」も投手たちのピッチングを受けるが、一方で、チームスタッフとして登録されているブルペン専従の捕手「ブルペンキャッチャー」が何人も投球を受ける。