核心にシュートを!BACK NUMBER
「オシャレだなー!」名波浩コーチの狙いで南野拓実の才能が生きた…“三笘薫と久保建英なし”でもイケる日本代表「ポケット活用」とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byVCG/AFLO
posted2024/01/17 17:42
アジア杯ベトナム戦で2ゴールを奪った南野拓実。彼の動きからは日本代表の「ポケット活用」という狙いが見える
「それをゴールに結びつけるのが僕の仕事ですから。例えば、タイ戦でもハーフバイタル(*ポケットのことを南野はこう呼んでいる)からシュートを打ったところが2、3本ありましたけど、ああいうところでしっかり決めきること。あるいは(最低でも)枠に飛ばす確率を上げること。それが多分、この大会でも課題になってくると思います。自分自身にフォーカスして、しっかりやっていければなと」
唯一無二の武器を持つ三笘や久保は、チームメイトに頼りにされる。立派なことだ。
一方、チームとしての狙いを高いレベルで表現できる南野は、そこからゴールやアシストをすることで、チームメイトに「自分たちが取り組んでいることは意味があるのだ!」という自信を与えられる。そうした仕事も、称賛されてしかるべきだ。
チームメイトに自信を与えられる選手には、チームメイトから頼られる選手に劣らない価値がある。そんな事実を見落としてはいけない――。
ミャンマー戦のアシストと2日前の「オシャレだなー!」
昨年11月、北中米W杯アジア予選の第一歩となったミャンマー戦でのこと。南野が上田綺世による先制ゴールをアシストしたのを覚えているだろうか?
あのアシストは南野がペナルティエリア手前から繰り出した、相手ディフェンスラインの裏への山なりのボールだった。
実は、あの試合の2日前、選手たちは動きながらパスを出す練習に取り組んでいた。そこで名波浩アシスタントコーチが選手たちに促していたのが、南野が試合で見せたような浮き球のパスだった。
「そう、オシャレだなー!」
名波はそんな言葉で選手を気持ちよくさせながら、浮き球のパスにトライさせていた。それが試合の中で活きたのだった。
南野という選手は、練習で取り組んだことをサラッと試合で出せる能力の持ち主であることをここに追記しておく。
もうおわかりだろう。
アジアの相手が目の色を変えて日本に挑んでくる今大会。29歳となった南野の長所に再び脚光が集まり、その存在感が高まる「南野ルネッサンス」が起きても何ら不思議ではないのだ。
<第1回「誕生日とW杯再評価」、第2回「“構想外”からの復活」からつづく>