ただ、この2人に湯浅京己投手（阪神）や松井裕樹投手（楽天）らがチームで務めるクローザー、セットアッパーというのは8回、9回の決められた登場回に合わせて心身両面での登板準備をすることに慣れている。いつ出番が来るか分からない中継ぎとは、同じリリーバーでも全く違う準備の仕方に慣れているのだ。

WBC本番での投手の役割分担

　逆に言えば中継ぎの難しいところは、いつ来るのか分からない登板に向けて、1試合で何度も準備をして、その中で突然訪れるマウンドで結果を出すということになる。

「（試合に）出ていかないで早い回からブルペンでバックアップで作るのは、普通なら2イニングか3イニングやるとみんなヘロヘロになっちゃう。マウンドに上がってしまえば、自分のことだけやればいいですけど、そういうマウンドに上がらない中の作業が得意な選手と得意でない選手がはっきり分かれる。伊藤大海はそれがずば抜けて上手です。宇田川もですね。そういう作業がすごく難しいので、その辺はちゃんと役割として分けてあげたい」

　厚澤コーチは本番での役割分担をこう説明した。

　特に球数制限がある中では、短いイニングでの交代を繰り返さなければならない。どうしても「あと1人」で投手を出し惜しみしがちだが、そこで栗山監督が描く通りに迷ったらすぐにマウンドに送り出せる投手がいることは、このチームの投手起用の1つの重要ポイントになるはずである。

　そしてそこに適性を持った投手をいかにあてがうことができるかだ。過去の国際試合では先発投手を慣れない中継ぎ、回またぎで使って手痛い目にあったこともあったからこそ、この2人の初実戦での好投は本大会に向けて価値があったはずである。

「（調整段階の）この状態でもこのピッチングができたので自信につながりました。チームにも馴染めて、自分らしさを出せるので、ここでいけるなという気持ちを持てました」

宮崎キャンプで戸郷（左）とともに歩く宇田川　©Hideki Sugiyama

　まだまだ言葉は遠慮がちだった。それでもしっかり前を見てこう語った宇田川の姿が、ジャパンの本大会への自信にも見えた。

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