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「宇田川ジャパンにのし上がって…」WBC侍ジャパン・コーチが明かす宇田川優希の対応力「馴染めないフリして全部かっさらっていく」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/02/28 20:00
侍ジャパン初選出の宇田川優希。WBCではリリーフとして様々な場面での起用が想定される
「宇田川の作戦通りじゃないですか。去年も育成から来て、全然馴染めないフリをして全部掻っ攫っていく(笑)。みんなまんまとやられました。宇田川ジャパンにまでのし上がって。ここまでは計算通りだと思う」
この試合でスクランブル登板を進言したという厚澤和幸ブルペンコーチは、こう冗談を交えて代表での宇田川の成長ぶりを賞賛した。
「他の選手と比べて(宇田川は)ボール(WBC使用球)を使い始めたのが遅かったので、どうしてもそこがアジャストできないでいたから。ここからです」と分析する厚澤コーチは、予定外の走者を置いた場面での宇田川起用を進言した理由をこう語る。
「クイックの方がボールをコントロールしやすい投げ方なんです。しかも走者を置いた状況でグッと入っていけるピッチャーってなかなかいないんですよ。ちょっと他のリリーバーと違う体質を持っているなというのが分かっていた。だからあえてランナーを置いているところで出してもらいました」
宇田川をメンバーに加えた最大のポイント
実は「後になってあそこで交代させておけばというのだけは避けたい。迷ったら交代させる」と早め早めの継を掲げる栗山監督にとって、走者を置いた場面で緊急避難的に使えるユーティリティー投手の重要性は選手選考の段階から重視していたところでもある。宇田川をメンバーに加えたのもそこが最大のポイントだったのだ。まさにその場面で宇田川は、いきなり期待に応える投球を見せてくれたわけである。
「(ダルビッシュには)投げる前に『ポジティブに行こう』と声をかけてもらって、自分もうまくいくと信じて投げられました。(2イニング目に自分で)ランナーを出してもバタバタせずに自分のピッチングができたので良かった。真っ直ぐも力強いボールを投げられたし、フォークでカウント取れたり、三振も取れた。イニングまたぎは苦手ではないので、リセットしてもう1回新しい気持ちで入れたので良かったと思います。自分らしさを出せたと思う」
日本シリーズ第4戦で1死三塁の絶体絶命のピンチを2者連続三振で脱出したパワーピッチこそ、この投手の真価。本大会でも日本のピンチを救う投手として初実戦で見せた投球は、チームにとっても大きな収穫だった。