話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「あそこは俺のコース」強気発言も連発、堂安律24歳がそれでも「メンタル強くない」と語る理由「壁に当たった時、唯一の救いは…」
posted2022/12/05 12:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
ワールドカップで勝ち上がっていくには、進撃のシンボルとなるようなヒーローが必要だ。
2002年の日韓W杯では稲本潤一が2ゴールを挙げて活躍し、「ワンダーボーイ」と言われた。2010年の南アフリカW杯では本田圭佑がカメルーン戦で決勝ゴールを挙げ、ヒーローになった。2018年ロシアW杯では乾貴士や大迫勇也が躍動した。
そして、カタールW杯では、堂安律がその座に就きそうな勢いである。
「代表の中心になってW杯に行き、ビッグクラブでプレーする」
ガンバ大阪時代、語っていた未来図だ。
紆余曲折があったにせよ、堂安は今回、それを半分、実現した。
ただのごっつぁんだろって、うるせえなと思っていた
今の日本代表には比較的おとなしい選手が多いが、そのなかで堂安はプレーだけではなく、語られる言葉でも尖った言葉で際立っている。
ドイツ戦でのゴールは、「俺しかいない。俺が決めるんだ」と決めたという。勝って日本を盛り上げたことについては、「サッカー選手だけど、エンターテイナー」と涼しい表情で語る。
スペイン戦でのゴールは、「ドイツ戦で得点はしたけど、ただのごっつぁんだろっていう人もいたし、うるせえなと思っていた」と語り、ゴールについては「もうあそこは俺のコースなのであそこでもてば、絶対打ってやると決めていたので思い切って打ちました」と、振り返った。
ゴールに貪欲なマインドは、ちょっと日本人と異なるかもしれない。その思考は、外国人のFWに似て、「自分が決める」という意識で一切ブレていない。実際、スペイン戦のゴールは、ボールを受ける前からシュートのイメージを持っていたせいか、シュートまでの流れに迷いも躊躇も一切なかった。その思い切りと判断の良さがあったからこそ決まったともいえる。
先輩に好かれる「図太い」堂安
ギラギラした感じを出しているがゆえに、そういったタイプが苦手な選手から敬遠もされそうだが、「図太い性格」と自ら語るように、周囲の見方や評価にはこれっぽっちも響かない。プレーではグイグイと進み、失敗を恐れずに挑戦する。
そういうプレーと性格のせいか、先輩たちにはむしろ好かれている。W杯前、赤髪に染めた長友佑都と同じタイミングで堂安も金髪に染めたが、ふたりで話をしている際、「律、いつ決めるんだ」と言われていたようで、ドイツ戦で決めた際は、長友がすごく喜んでくれたという。
また、「食事会場では多くのことを吸収できる吉田(麻也)さん、長友さんと一緒にいます」と語るように、先輩たちと一緒にいることが多いが、そこからは何かを少しでも学びたいという意欲が見える。