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甲斐拓也か、森友哉か…WBC侍ジャパン栗山監督を悩ます捕手選考! そこで浮上する第3の男とは?「想像できないことに対処するために」
posted2022/11/08 11:05
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
センター前にしぶとく打球は落ちた。
「やっぱり甲斐だな……」
その打球を見てそんな思いが心に響く。
2023年3月に開催される第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた日本代表「侍ジャパン」の強化試合。巨人を相手にした11月6日の第2戦のことだった。
この試合、7回を終わり2点リードされた日本代表は、8回に4番・村上宗隆内野手(ヤクルト)が前日の第1戦に続く2試合連発の2ランを放って追いつく。さらに5番の山田哲人内野手(ヤクルト)が連続ホーマーで勝ち越すと、6番の西川龍馬外野手(広島)が三塁打。佐藤輝明外野手(阪神)が空振り三振に倒れた2死から打席に入ったのが、この試合で先発マスクを被る甲斐拓也捕手(ソフトバンク)だった。
カウント1―1からの3球目、巨人の育成選手、堀岡隼人投手の外角低めに流れるスライダーをうまく拾った打球が中前に弾んだ。三塁から西川が還って、侍ジャパンに貴重な追加点が入った。
捕手・甲斐拓也の打撃の真骨頂
打てない、打てないと言われながらも……実際に今年のシーズンでは打率1割8分の1本塁打と低迷しているが……代表ではこういう勝負どころの打席で、初見の投手でも何とかする。それが「やっぱり甲斐だな」と思った理由だ。基本は繋ぎの意識。端からセンター中心に逆方向へ打ち返すことしか考えずに、ボールを呼び込んで鋭く振り抜く。そして相手が簡単にストライクをとりにきそうなシチュエーションでは、思い切ってヤマを張って強振もする。
甲斐の国際試合での打撃の真骨頂だ。
同じような姿を19年のプレミア12や昨年の東京五輪でも、何度も見てきた。初顔合わせの多い国際試合では自分も相手を知らないが、相手も自分を知らない。そういうシチュエーションの方が、お互いを知り尽くしているレギュラーシーズンより、むしろ捕手としての状況判断や配球への読みが、より意味を持つということなのかもしれない。
いよいよ本格的に動き出したWBCに向けた日本代表チーム。大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)やダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)、鈴木誠也外野手(シカゴ・カブス)ら大リーガーの去就もまだわからず、最終的なチーム編成はまだ先だ。