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「やっぱり巨人で脱ぐべき…」電撃復帰の長野久義37歳に熱望したい「困った時のチョーさん」坂本勇人のサポート役&ドラ1浅野翔吾の先生役
posted2022/11/08 11:03
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
JIJI PRESS
まだ令和が始まる前、2019年の1月中旬のことだ。東京ドームのグッズショップには「ありがとう長野久義」コーナーができていた。
巨人にFA入団する丸佳浩の人的補償での広島移籍が決まった数日後、店のど真ん中の棚を全部使って展開という異例のチョーさん送別祭。苦楽を共にしたG党も、彼が華麗に飲み歩いた東京の夜の街も泣いていた。退団選手や背番号変更の選手は、通常別コーナーでまとめてセール販売されるケースが多いが、長野の場合は値引き等も一切されていない。それでも、タオルやTシャツといった定番モノから、ティッシュケースまで片っ端から背番号7グッズをカゴいっぱいにいれるファンの姿も目立った。
09年のドラフト1位で入団以来、新人王や首位打者に輝き、在籍9シーズンで計1271安打、137本塁打を放った功労者との突然の別れ。当時、ファンは原監督の3度目の復帰や丸佳浩獲得の喜びが霞むほどの衝撃を受けたが、長野本人は決して感情的にならず冷静に「なぜカープはあんなに強いのか、ずっと知りたかった。中に入ればきっとそれが分かるでしょう。新しい野球を勉強できるのは、本当に楽しみです(19年1月11日付「東京スポーツ」)」と大人のコメントをしていたのが印象深い。己の混乱や悔しさよりも、まずはリーグ3連覇中のカープを立てる。長野久義という選手はプレーだけでなく、その気遣いと人間性込みで愛された選手だった。
「やっぱり巨人で脱ぐべきではないか」
そして、22年秋、再び長野はファンを驚かせる。今度は無償トレードで巨人への電撃復帰だ。出るときも、戻るときも衝撃をもたらす男。今回の移籍劇について、広島の鈴木清明球団本部長は「彼は2度もドラフト(指名)を拒否している。巨人に入りたくて、巨人を貫いた選手。いつかユニホームを脱ぐことがあるとしたら、やっぱり巨人で脱ぐべきではないかと思っていた(22年11月3日付「スポーツニッポン」)」と明かし、本人の野球人生を考え広島側から打診したものだったという。
もちろん、そこには人情だけではなく、シビアな現実もある。長野は今季、自己ワーストの58試合の出場に終わり、打率.211、3本塁打、15打点、OPS.594とプロ入り以来最低の1年を過ごした。推定年俸は1億2000万円と高額だが、広島在籍の4年間で100試合以上に出場したシーズンはなく、数字的にすでにピークを過ぎているのは否めないだろう。
思えば、25歳で巨人入りして、入団から5年間で放った通算安打数767本は、日本人選手としては長嶋茂雄や青木宣親を抑えてNPB歴代最多記録だった。11年から3年連続で外野手部門のベストナインとゴールデン・グラブ賞をダブル受賞。いわば、プロ野球史上屈指の完成された“超即戦力ルーキー”だった長野も、この12月で38歳になる。あれから、長い時間が経ったのだ。
「引退した亀井善行の穴はやはり大きかった」
さて、巨人復帰後の長野久義に期待される役割はどういうものになるのだろうか? とにかく今季の原巨人は外野の人材不足に悩まされた。