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PSGメッシらをサポーターが威圧…CLベスト16でレアル大逆転勝利の背景<翌日、カンプノウではなぜかバルサの守護神にブーイング>
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/03/14 11:00
これまで何度も見てきた「メッシvsマドリー」のマッチアップ。今までと違うのはメッシがPSGの一員であるということだ
そこからは一進一退の攻防が続く中、PSGにも大きなチャンスが訪れるが、プレーが切れた際にはベンゼマがそれぞれの持ち場まで足を運び、一人一人に声をかけて回っている姿に、キャプテンとしての存在感の大きさを感じさせられた。
しかし39分、個としての圧倒的強さを誇るムバッペがネイマールのパスへ自陣から抜け出し、一気にゴールをたたき込んだ。2試合合計で2得点差と、大きく勝ち抜けに近づいたPSG。ネイマールがムバッペを背負うなど、勝利を確信した笑みを浮かべ、前半終了を迎えた。
アラバが口にした「テ ネセシト」とは
後半も手詰まり感を醸すマドリーに対し、早々にムバッペがクルトゥワまでかわしてゴールにボールを流し込むが、オフサイドで取り消された。
直後、マドリーのアンチェロッティ監督は2枚替えを敢行。その際には、アラバに直接指示を与えた。今季新加入ながら最後尾よりチームを支える存在になっていたアラバは、相方ミリタオが痛みで倒れてしまった際には、一番に駆け寄ると、「テ ネセシト」と語りかける言葉が自分の耳にも届いてきた。
「お前が必要だ」というその言葉に、ミリタオが立ち上がる。あまりにも漫画のような世界が繰り広げられ、次の展開が待ち切れないほどだったが――アラバの言葉が聞こえたと思うほどに、この頃には静かになっていたサポーターを駆り立てる姿を撮影できた。
ここから一気にストーリーは加速し、直後にベンゼマのプレスが相手のミスを誘いベンゼマがゴール。反撃の狼煙を上げ、スタジアムの雰囲気が一変した。この後の大逆転劇までに、確実にベルナベウスタジアムの後押しがあったと思える。
1失点はOKと分かっていたはずのPSGだったが、実際に失点をしてしまい、雰囲気に飲み込まれていってしまった。
そして76分、モドリッチの股抜きスルーパスをベンゼマが押し込み逆転。さらに78分、ベンゼマのハットトリックで勝ち抜けを決定づけた。
この大逆転劇が、サポーターと共にあったことは選手も理解しており、終了と共に喜びを爆発させると、観客席の近くまで駆け寄り、喜びを分かち合う姿を撮影できた。
撮影ポジションという、ピッチと観客の間にいることで、冷静に撮影しながらも、雰囲気に酔うことができた。年に数度ある選手と観客が本当に一体になる、このような雰囲気を味わいたいがために、十数年も海外生活をしているのだなと思い出させられた。