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鷹の守護神・森唯斗の球筋は必見。
1球ごとに「性格」がある魔球とは。
posted2019/02/03 08:00
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
「田中さん、全部のボール、動いてるのわかりました?」
灼熱のグアムの地で、森唯斗は笑みを浮かべながら話してくれました。
最初は言っていることがまったくわかりませんでした。けれど目を凝らして彼の投球練習を何度も、何球も見ているうちに、確かにすべてのボールが少し滑るように動いているのがわかりました。
カットボール気味に横にずれたり、またはシュート気味に反対側に曲がったり、時には滑るように上に浮いたりと、ボールが動いていました。このボールこそが2018年、パ・リーグ最多セーブ投手に輝き、チームを日本一に導いた森の最大の魅力です。
気温30度のグアムで連日、自主トレを行う森は幾度となくブルペンに姿を現しました。前から、後ろから、そして横から投球練習を見せてもらい、気がつきました。
クセ球を最大限に生かす。
腕を目いっぱい振っているように見えて、実は精密機械のように繊細。コース、スピード、ボールの変化量、リリースの位置。強靭な下半身から生み出されるボールは、一球一球に「性格」があるように見えました。投じるボールそれぞれに意思があり、相手打者のスイング軌道がわかっていて、それを避けるように動いているのが見えました。
特に印象的だったのは、右打者へのインコースのボール。
森唯斗という投手はリリースする瞬間の手首の角度が独特で、最後は自らの左側、つまり一塁方向へ手首がしなっていきます。そのためにボールがスライドするという特徴がありました。自らが持つ独特の、いわゆる「クセ球」を、殺すのでなく最大限に生かしてきたのです。
去年の日本シリーズでは、カープの主軸である鈴木誠也ら右打者をことごとく抑え込みました。そこに彼の技術が結集されていました。