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則本と牧田の登板順を徹底検証!
9回と11回は必要な能力が違う?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/03/13 11:45
10回、11回を見事に無四球無安打で抑えた牧田。ベンチ前で迎える小久保監督の手に、ウイニングボールが握られている。
なぜこのタイミングでの則本起用だったのか?
1次ラウンドでは大事な開幕のキューバ戦の第2先発を則本に任せた。
この時は5回からマウンドに上がり、2回をピシャリと抑えたが3イニング目にキューバ打線に捕まった。一昨年のプレミア12でも同じようにリリーフで回またぎをさせて打たれた反省もあり、2次ラウンドの時は1イニング限定でリリーフ待機した上で、勝敗次第では15日のイスラエル戦でシーズン中に慣れている先発での起用も予想されていた。
そういう構想の中で、この試合ではあと1イニングを抑えきれば勝利という状態になったことで、ジョーカー投入が決まった訳である。
加えて、もし追いつかれてタイブレークに入った際には指揮官が「投手陣で最もフィールディングがいいのは牧田」と語っていた、牧田の守備力への計算もあった。
無死一、二塁から始まるタイブレークでは、まず相手の送りバントを阻止できるかが、大きなポイントになるため。その危機管理もあって、先に則本という順番になったのだ。
首脳陣にとっては決して唐突な器用ではなかった。
準決勝以降の秘策を前倒ししただけで、1イニングの限定起用という点でも、ゲーム前のプランニングと合致する。加えていうならば、それだけオランダ戦の勝利が重かったから、前倒ししてでも則本のクローザー投入を決断したということだった。
「一生忘れることのない試合だと思います」
結果的には則本は9回を抑えて逃げきれずに、同点に追いつかれた。しかし逆に10回からマウンドに上がった牧田が、強力オランダ打線を無安打に抑え切って2回を凌いでチームに勝利を呼び込んだ。
「みんなにカバーしてもらった」
則本が語ったように、1人の成功や失敗ではない。
投手陣が全員で掴んだ勝利だった。
「あまり脳みそは動いていません」
試合後の会見。第一声でこう語った小久保監督は、感慨深げだった。
「一生忘れることのない試合だと思います。最後まで勝ちたいという執念があった。全員の勝利です」