ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER
ホームの難しさか、予選の難しさか
text by
木ノ原久美Kumi Kinohara
photograph byNaoya Sanuki
posted2005/02/14 00:00
3大会連続のW杯出場をかけて、日本のアジア地区最終予選が始まった。2月9日、埼玉スタジアムで北朝鮮を迎えた日本は、苦しみながらもFW大黒のロスタイムのゴールで2−1で勝利し、勝ち点3を手にした。
この日バーレーンで行われたグループBのもう一試合、バーレーン対イラン戦は0−0の引分けに終わり、この結果、日本は同組首位での発進となった。
ホームゲームの難しさか、W杯予選の難しさか。
「ファンの皆さんも、W杯予選の難しさをわかってきてくれていると思う」。ジーコ監督は試合後に厳しい表情でそう話した。
日本は試合開始から積極的に動き、前半2分には左サイドをゴールに向かうMF三都主が倒されてFKのチャンスを得る。MF小笠原がこれをゴール左隅に直接決めてリードを奪い、日本は理想的なスタートを切ったかのように見えた。
ところが、その後日本は消極的になり、しかもボールが収まらない。
パスやボールコントロールなど、細かなところでミスが続き、自らリズムを崩す。相手がファウルも辞さない当たりを見せてきたこともあるが、チャンスを作りかけながら自らのミスで決定機を作れずに追加点を奪えない。ミスから相手にボールを奪われて、速攻を喰らってしまう苦しい時間帯が続く。そして後半15分には、交替出場のDF南成哲(ナム・ソンチョル)に左サイドから同点弾を決められた。
「焦りなのか、攻めを縦へ急いでしまった」とジーコ監督は指摘し、DF中澤は「前線でボールを取られてドタバタしてしまい、相手の勢いに後手後手になってしまった」と振り返った。
そこに、最終予選初戦でしかもホームゲームという要素が影響を与えていた可能性は捨てきれない。ホームのファンの期待と注目を浴びての気負い。試合の数日前からの異様とも言える周囲の盛り上がり。ホームの方がやりにくいという声もある。だからこそ、ジーコ監督は選手に「平常心で戦うこと」と繰り返して説いてきたのだが…。
失点直後、ジーコ監督は後半18分にFW高原を同20分にMF中村を投入。「ひとりが入って動くことで周りも動きがよくなる」という監督の思惑どおり、二人の登場とともにチームはパスがつながるようになり、日本はリズムと平常心を取り戻す。そして、二人に続いて交替出場した大黒が、終了間際に待望の決勝ゴールを決めた。
大黒のゴールは、練習してきたサイドからの攻撃から。相手GKがクリアした小笠原のクロスボールを福西が拾って大黒へ出し、ボールを受けた大黒は、素早くゴールへ振り向いて左足を振りぬいた。昨年のJリーグ日本人得点王のガンバ大阪FWの持ち味を十分に生かした一発だった。
ジーコ監督は、「30年間サッカーをやってきて、最後の5分で決着が付くことが多いことを経験している。最後の5分で冷静さを保って、焦らずに判断してゴールを奪う。それを選手たちには伝えてきたつもりだし、その難しいことを選手たちが実戦してくれている。それが私の喜びであり、そこに私のツキがある」と言った。
サッカーの試合で普段通りのプレーをさせてもらえないことは、ままあることだ。しかもW杯予選などのビッグゲームではその度合いは大きくなる。だからこそ、ジーコは平常心を説き、ミスをなくすことを説く。今後の試合でどれだけそれらを実践できるか。それが日本の予選突破のカギとなる。
日本の次の試合は3月25日にテヘランでのイラン戦。その後、3月30日に埼玉スタジアムでバーレーンを迎え撃つ。その後、日本は6月3日にバーレーン、同8日に北朝鮮とそれぞれアウェーで、8月17日にイランとホームで対戦する。
アジア最終予選では8カ国が2組に分かれてホーム&アウェーで戦い、各組2位までが2006年ドイツ大会への切符を手にできる。各組3位は両者でプレーオフ(9月3、7日)を行い、勝者が北中米カリブ海地区4位チームと大陸間プレーオフ(11月12、16日)を行い、そこで勝てば本大会への出場権を得ることができる。