サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
サッカー好きに贈るラグビー講座。
大きく違うオフサイドの概念とは。
posted2019/10/01 12:00
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
Naoya Sanuki
まさか2大会連続でこんなゲームを見られるとは思っていなかった。
ジャパンがアイルランドを破ったのだ。4年前の南アフリカ戦に続いて、またもや大番狂わせを起こした。ラグビーのワールドカップである。
ちなみにサッカーとは違い、ラグビーでは番狂わせはめったに起きない。
サッカーで、圧倒的に優勢なチームがシュートをことごとく外して負けたり、守備を固めた格下チームがワンチャンスをものにして勝つことがあるのは少得点競技だからだ。
一方、ラグビーでは実力差があれば得点は際限なく入る。「際限なく」とは大袈裟な、と思うかもしれないが、かつてジャパンはオールブラックス(ニュージーランド)に開始90秒で奪われた最初のトライに始まり、6分、9分、12分、15分……と得点を積み重ねられ、前半だけで84失点。最終的には145失点したことがある。そういう競技なのだ。
南ア戦は「超」サプライズだった。
そもそもフォワード(前方への)パスができないから「守備を固めて前線のFWへ」という弱者の戦い方ができない。これはリードしている側にとっても同じで、「後ろでボールを回して時間を使う」なんてこともやっぱりできないから、結果、得点差はどんどん開いていくことになる。
つまりゲーム内容とスコアがだいたいリンクするのだ。当然、番狂わせは起こりにくい。
前回大会で南アフリカを破ったとき、(自国のメディアが誇張的に報じたのではなく)世界中が「世紀の」とか「史上最大の」というフレーズを用いて驚いたのは、ラグビーのそんな競技性を理解しているからだ。
しかも紛れもなく「ジャイアント」の南アフリカを破ったのは、オールブラックスにワールドカップ史上最悪の大敗を喫したあのジャパンである。ラグビーネーションの人々にとって「超」が付くサプライズだったのだ。