テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
フリーマン爆笑「これが必要なんだ!」“キム・ヘソン相手にコケた”ロバーツ監督も大谷翔平も…連覇崖っ縁ドジャースはなぜか悲壮感ゼロだった
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byRobert Gauthier/Getty Images
posted2025/11/27 06:00
WS連覇を決めた直後の大谷翔平とロバーツ監督。じつは“崖っぷち”の状況でも悲壮感はなかった
ちなみにスポニチは私と杉浦大介通信員のペン記者2人、さらに沢田明徳カメラマンの3人で今回のポストシーズンを取材しており、杉浦通信員と沢田カメラマンは試合後すぐに空港に向かい、トロントへ飛んでもらった。私はロサンゼルスに残り、原稿を書き切ってからトロントへ。翌30日の17時半にトロント空港に着き、急いで配車アプリUberを使ってロジャーズ・センターへと向かった。私がロジャーズ・センターに到着したのは18時頃。ちょうどドジャースの練習が始まる直前だった。
キム・ヘソンと競走…コケたロバーツ監督
ここでターニングポイントの一つかもしれない出来事が起こった。いや、ロバーツ監督が自ら起こしたといってもいい。
練習開始直前のことだ。ロバーツ監督は俊足の金慧成(キム・ヘソン)を一塁に立たせ、自身は5メートルほど二塁方向に立った。一塁から三塁までのベースランニング競走だ。報道陣も気づき、テレビカメラやスチールカメラ、スマートフォンなどそれぞれのカメラを向けた。
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スタート後、ロバーツ監督は抜かされると思ったか、二塁を踏まずにショートカットして三塁に向かったが、足がもつれて前方に突っ伏した。大きな笑い声が球場内に響き渡り、胸元から膝下まで土まみれの指揮官は「あぁ! やっちまった!」と叫び、照れ笑いを浮かべた。
「これ(映像)は表に出さないでくれ」
その光景に爆笑していたフレディ・フリーマンは指揮官に近寄って「これが我々が必要としていたものだ」と語り、ハイタッチを交わした。
指揮官は現役時代に通算243盗塁を誇る。中でも語り草が、レッドソックス時代の2004年に0勝3敗で迎えたヤンキースとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦。1点を追う9回に代走で二盗を決め、次打者の中前打で同点のホームを踏み、延長12回にサヨナラ勝ち。チームはそこから4連勝を飾り、最終的には86年ぶりにWSを制覇した。「伝説の盗塁」と語り継がれている。
崖っ縁だが大谷も悲壮感はなかった
フリーマンの言葉通り“負けたら終戦”の大一番を前に、どこか漂っていた緊張感は、この大転倒で一気に明るくなり、笑顔や活気があふれた。崖っ縁からの2連勝で21世紀初のWS連覇を決めれば、「伝説の走塁」として再び語り継がれるかもしれない……。その場にいた多くの人が感じとっていたはずだ。
負けたらWS連覇の夢が散る大一番を前に大谷も悲壮感はなく、笑顔だった。〈つづきは下の【関連記事】へ〉

