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「巨人スカウトは馬鹿か?」批判も…ドラフト“上位で捕手2人”指名はなぜ? 元巨人スカウト部長が明かす「初めて褒められた」翌年“まさかの退任”まで
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNumberWeb
posted2025/05/26 11:03
1980〜90年代にかけて巨人の中心選手として活躍し、現役引退後は一軍ヘッドコーチや編成本部アドバイザー、スカウト部長など、巨人の要職を歴任してきた岡崎郁、63歳
「ありがとうございます。8年経って、初めて褒められました。スカウトってね、評価されないんですよ。2人の担当が誰か知られていないし、部長も忘れられている(笑)。岸田は益田明典スカウト(元投手/87年5位)、大城は渡辺政仁スカウト(元投手、外野手/85年3位)ですよ」
今年、FAでソフトバンクから甲斐拓也が加入し、2人とも出番が減っている。しかし、大城は4月に「5番・一塁」として中日戦で2試合連続ホーマー。岸田は阪神戦で代打決勝タイムリーを放ち、今季初スタメンのDeNA戦ではグリフィンを好リードして1号ホーマーなど2打点と活躍。出番が少ない中で、奮闘している。
「伸びる選手と伸びない選手の差は1つ」
「巨人は伝統的に『自分よりもチームを優先できるか』という考え方が重視されるし、大型補強もあるから『腐らない心』も大事になってくる。2人はそれを兼ね備えていますよね。伸びる選手と伸びない選手の差って、1つしかないと思います。いつも同じ気持ちで練習を継続できるか。『なんで使われないんだ』と環境や人のせいにして、不貞腐れて手を抜いたり、怠ったりしたら、いざという時にチャンスをモノにできない」
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岡崎は「プロに入る選手は、誰でも活躍できる可能性を持っている」と考えている。だが、現実には全員が日の目を見るわけではない。
「確率の違いはありますよ。清原(和博)や大谷(翔平)のように90%の選手もいれば、50%や20%の選手もいる。でも、0%はいない。毎日、質の高い練習をより多くした人が勝つんです。そのためには、どんな状況でも、一定の気持ちを保てる精神力が必要になる。僕らの時代で言えば、川相(昌弘)は強い気持ちで猛練習をして、這い上がって行きました。人間は1人では弱いから、練習をやらせる指導者も大事になってきますよね」
スカウト部長退任後、19年12月にジャイアンツアカデミーの校長に就任。21年まで務め、現在は九州の独立リーグに所属する『大分B-リングス』でGMとして腕を振るい、YouTubeチャンネル『アスリートアカデミア』でも活動している。
「ジャイアンツでは選手、指導者だけでなく、編成、スカウト、子どもの指導までできた。自分としてはやりきった感はありますね。1つの仕事をやり遂げることも素晴らしいけど、いろんな経験をするのも大事だなと」
さまざまな役職を渡り歩いたからこそ、岡崎は実感できた。個人の能力だけで名プレーヤーは生まれない。スカウトが資質を見抜き、コーチが上手に操縦し、選手があきらめずに努力を重ねる。三位一体となって、何名ものスターが誕生した時、初めて常勝軍団が形成されるのだと――。
〈第1回、第2回へ/公開中〉



