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「巨人スカウトは馬鹿か?」批判も…ドラフト“上位で捕手2人”指名はなぜ? 元巨人スカウト部長が明かす「初めて褒められた」翌年“まさかの退任”まで
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNumberWeb
posted2025/05/26 11:03

1980〜90年代にかけて巨人の中心選手として活躍し、現役引退後は一軍ヘッドコーチや編成本部アドバイザー、スカウト部長など、巨人の要職を歴任してきた岡崎郁、63歳
「2人とも特Aの評価でしたが、根尾がダントツに高かったです。当時、ショートには坂本勇人がバリバリのレギュラーでいましたけど、セカンドやサードが決まってなかった。根尾は投手ではなく、内野手として考えていました。小園(海斗)もいい選手でしたけど、根尾ほど足は速くなかった。身体能力から伸びしろを判断して、1位指名は根尾だなと」
17年の清宮幸太郎、18年の根尾はともに甲子園を沸かせたスターである。翌年にヤクルトと競合した奥川恭伸(星稜)、22年に阪神と競合した浅野翔吾(高松商)もそうだった。1位指名の際、人気は考慮するのか。
「若干ありますかね。甲子園のスターって、どの球団も欲しいと思います。やっぱり、営利目的の株式会社ですから。プロで良い成績を残した選手はたくさんいるけど、甲子園に出ていないキラキラのスターって言われると、僕は長嶋茂雄しか思い浮かばないですね」
ドラフト会議“2週間前”に退任…なぜ?
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この年、ペナントレースは広島が独走して3連覇を果たす。10月3日、巨人・高橋由伸監督が3年連続V逸の責任を取って、今シーズン限りでの辞任を発表した。これがフロントにも波及する。指名候補の最終調整に入っていたドラフト2週間前、岡崎は球団事務所の社長室に呼ばれた。
社長:スカウト部長を退任してほしい。
岡崎:……わかりました。
「驚きましたし、ショックといえばショックですけど、受け入れるしかない。雇われの身ですから。前の年のドラフトがうまくいっていれば、状況は違ったかもしれない。『どうしてだろう』とは思ったけど、答えは出ないし、悩んでも仕方ないんです。(直後の)ドラフトの指名は、僕の考えていた通りでした」
志半ばにして、岡崎は職を辞した。
「鹿取GMも退任していますし、体制を代える時は上が責任を取る。世の常です。ただ、仕事の性質上、スカウトは絶対に長く務めたほうがいい。見る目が養われるし、人脈を広げるには年月が必要です。最初、高校や大学の監督さんと会った時、壁を感じました。構えられるんですよね。信頼関係を結ぶには1回ではなく、10回会ったほうがいいわけですから」
批判された「社会人捕手2人獲得」
ドラフトは近視眼的に見られがちだ。しかし、大局的に考えると、岡崎スカウト部長の17年が失敗だったとは言えない。特に、批判の嵐にあった社会人捕手2人の獲得は成功だった。昨年、岸田行倫はチーム最多の72試合で先発マスクを被り、大城卓三は捕手だけでなく一塁手として、不振の坂本勇人の穴を埋めた。2人の活躍なくして、優勝はあり得なかった。