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「絶対に“大丈夫?”と聞かなかった」バレーボール始めて5年で日本代表に…“未知の世界”に飛び込む息子を支えた母の愛情「返信なんて、ないない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/07/30 17:01
2度目のオリンピックに挑む山内晶大(30歳)。今大会限りで日本代表の活動を終えることを明言している
「2021年にパナソニック(現・大阪ブルテオン)でキャプテンになってから顔つきも変わりましたよね。それまでは感情をあまり出さずに淡々とやっていたけれど、今は責任感も出て、みんなを引っ張ってやろう、という姿が見られるようになった。見ていても嬉しいです」
五輪予選は会場で全試合を観戦した。「息が止まりそうだった」と振り返りながら、パリ五輪に出場する12人に名を連ねたことを噛み締めた。
息子はパリ五輪を『Last Dance』と記し、さまざまな場所でも今季限りで日本代表からは離れることを口にしてきた。それも「まだ本人から聞いたわけではない」と前置きしながら、母は本心を明かす。
「できればもう少しやってほしいですけどね。日本代表は最後と言うことで自分を鼓舞しているのかな。最後のオリンピックになるかはわからないですけど、とにかくチームに貢献してくれれば、それで充分。メダルとかじゃないんです。だって、うちの子どもの人生がこんなふうになるなんて思っていなかったですから。私たちには言わないけれど、ずっと、努力してきたんでしょうね」
「名古屋は今日も暑いよ」。返信はほとんどない。それでも母は息子にLINEを送る。
面と向かって話す機会も限られているが、もしも本当にパリ五輪が日本代表として臨む最後の大会になるなら、伝えたいのはひとつだけ。
「それは、もう『頑張ったね』ですよね。それしかないです」
言葉数も返信の数も少ない息子さん、どうかその返事は『ありがとう』のひと言で。
(前編から読む)
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