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「絶対に“大丈夫?”と聞かなかった」バレーボール始めて5年で日本代表に…“未知の世界”に飛び込む息子を支えた母の愛情「返信なんて、ないない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/07/30 17:01
2度目のオリンピックに挑む山内晶大(30歳)。今大会限りで日本代表の活動を終えることを明言している
もともと口数が多いわけではない息子とは、車内の会話もそれほど弾むわけではない。新幹線の出口で待っていても、合流してから何も言わず荷物を持って駐車場に直行するのが日常茶飯事。それでも、時折話すチームメイトのことや今の状況を聞ければ安心できた。送り届けた後に「新幹線乗れた?」とメッセージを送っても「乗ったよ」とそっけない返信しか来ないのだが、母は嬉しかった。
大学時代と同様に、息子が出場する日本代表の試合は国内外を問わず、現地に駆けつけた。会場の売店に並んでグッズを買ったり、選手グッズが引けるガチャガチャでは息子のアイテムが出るまで回し続けた。
「なかなか出てこないんですよ。人気者じゃないからかな(笑)」
「報告なんて、ないない(笑)」
日本代表というトップの場所で世界の猛者と渡り合う。そんな環境でやっていけるのかという心配とは裏腹に、晶大は2014年ワールドリーグを皮切りに、世界選手権やワールドカップなど多くの国際大会で経験を重ねていった。2021年東京五輪のメンバー選出はどんなふうに報告してきたのか、と尋ねると純子さんが笑いながら首を振る。
「ないない(笑)。私が自分で調べて、選ばれたんだ、と知りましたから」
山内が日本代表に選出された頃、国際大会では結果を残せないことが続いていた。選手にとっても、関係者にとっても、応援する家族にとっても苦しい時代だった。だが、それでも選手たちは諦めることなく努力を続け、一歩一歩、階段を上ってきた。初選出から10年が経った今は、オリンピックの数ある競技の中でもメダル候補として高い関心と注目を集める日本代表チームへ変貌を遂げた。
そんなチームで、あれほど前に出るのが嫌だった息子が、たくましく活躍している。母はどんな思いで見つめているのだろうか。