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バセドウ病、失明危機、子宮の病…元女子バレー日本代表・鍋谷友理枝(31歳)が明かす壮絶な13年「18歳で宣告…なんで私は健康じゃないの?」
posted2025/07/10 11:03
リオ五輪や2度のワールドカップに出場するなど、日本代表としても活躍した鍋谷友理枝(31歳)。2024/25シーズンをもって現役を引退した
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Shigeki Yamamoto
2019年の春、鍋谷友理枝は失明の危機に直面していた。
翌年の東京五輪に向けた日本代表合宿での練習中、強烈なスパイクがブロックに跳んだ鍋谷の顔面を直撃した。目を開けることもできない痛みに見舞われ、硝子体出血と診断された。
再び同じ事態に見舞われれば、網膜剥離になる可能性がある。競技続行どころか生活にも支障をきたしかねない大ケガだったが、鍋谷はアイガードと呼ばれるゴーグルを装着して、コートに立ち続けた。
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「自分で情報を集めて、最初は既製品を使用していました。オリジナルのゴーグルができたのは、(19年の)ワールドカップからでした」
鍋谷が直接店舗を訪れたことを知ったSWANSの担当者が、競技特性や鍋谷の動きに配慮したオリジナルモデルを開発。現役最後の試合まで装着し続けたゴーグルは、鍋谷の新しいトレードマークにもなった。
「『鍋谷さんがつけることで、たくさんの人に知ってもらうことができた』と言ってくださるんですけど、むしろ逆で。細かい要望を聞いて、丁寧に素敵なゴーグルをつくってもらえたから、最後まで不安なくプレーすることができた。本当にいろいろな方に助けてもらって、支えられて、活かされてきたからこれだけ長く現役生活を送ることができました」
さまざまな節目で「いろいろな人に助けられた」と感謝を述べるアスリートは鍋谷だけではない。だがその言葉がより深く、重みを増したものであることは彼女が歩んできた道のりを見ればわかる。
競技を始めた8歳から数えれば23年。鍋谷のバレーボール人生は、波乱に富んでいた。

