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〈追悼〉がん公表から1年…藤井直伸、31歳で逝く「目指すのはパリ五輪ですよ」病室でも妻とバレーボールを…仲間に愛された男の最期
posted2023/03/17 17:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
AFLO
中央の「21」のユニフォームを全員がつかみ、指差し、21勝目を喜ぶ。
3月12日、V1・堺ブレイザーズとの試合で勝利した直後の東レアローズの集合写真だ。
ファイナル4進出に向けた大一番をストレート勝ちで飾り、歓喜の輪には選手だけでなく監督もコーチもいる。
ただ、その笑顔は泣いていた。
堺での試合終了から3時間が経つ頃。公式HPに記されたのは、あまりにも悲しい訃報だった。
◇◇◇
東レアローズ男子バレーボール部選手である、藤井直伸が去る2023年3月10日に永眠いたしました(享年31歳)。人柄も含めチームの中心であり今後の活躍を嘱望されていた選手を失ったことは悲しみに耐えません。
(東レアローズ男子バレーボール部HPより抜粋)
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目の不調…診断結果は胃がんのステージ4
東京五輪から4カ月後の2021年12月に開催された天皇杯の頃、目の不調を感じた。最初はなかなか原因がわからず、さまざまな検査を進める中、胃がんと診断された。目の症状は、脳へ転移したがんの影響で、その進行度はステージ4。置かれた状況を昨年の2月27日に自らのインスタグラムで公表した。
あれから1年。
なぜ、とか、早すぎる、とか。浮かぶたくさんの言葉をかき消すべく文字を打つが、やはり浮かんでくるのは笑顔しかない。泣き虫だったから、時々泣き顔も。
コートではなく、病との戦いを余儀なくされてからも、藤井は強く、明るい人だった。