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「大切な人を大事にして」ロッテ・澤村拓一はなぜお立ち台で想いを口にしたのか…今明かす祖母との別れ、涙の秘話「愛しているよ。おばあちゃん」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2024/04/26 11:05
気迫溢れるピッチングでピンチを抑えた澤村
澤村は36歳になった今でも大好きだった祖母と一緒に寝ていた時の安心感を忘れない。優しさとぬくもりが身体に残っている。大事に優しく見守りながら育ててくれた愛があったから今がある。感謝は尽きない。棺には自身のユニホームを添え、葬儀会場にはおばあちゃんが大好きだった花を沢山、並べた。
後日、澤村はふと口にした。
「最後、どんな場面が脳裏を過ったんですかね。誰の顔なのだろう? 父かな。もしかしたらオレかな。幸せな思い出かな」
答えはもちろん誰にもわからない。それでも澤村はずっとそのことを真剣に考え込んでいた。そこには、おばあちゃんの事を誰よりも愛していた孫の姿があった。
愛そのものだった祖母の言葉
悲しみを胸に、大好きなおばあちゃんとの色々な思い出を大事にしながらこれからも澤村は大観衆が見守るマウンドに立つ。この場所で最高のパフォーマンスを見せ、ファンを喜ばせる。夢を提供する。メッセージを伝える。それは彼が全うしなければいけない責任ある仕事であり今、出来る事。涙を我慢しながら、時には歯を食いしばりながらも前へ、前へと力強く進む。
ただ、それでも、やっぱり、このプロ野球のグラウンドという修羅場のような仕事場にいながらも、ふと優しかったおばあちゃんの事を思い出すことがある。
振り返るとプロ野球選手になっても「頑張ってね」と言われたことは一度もなかった。いつも気遣うように「身体は大丈夫かい?」と心配そうに声をかけてくれた。それはおばあちゃんの孫を想う心。愛そのものだったと、今だからこそわかる。