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「気を遣わせたくない」隠し通した最愛の人との別れ…ロッテ・吉井理人監督が声を震わせた日「母さんに何かしてあげられたかなぁ…」〈今明かす2023激闘秘話〉
posted2023/12/25 06:06
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
2023シーズン、吉井理人監督は要所で選手を集めてミーティングを開いた。石垣島春季キャンプのスタート前日。開幕試合前、シーズン最終戦の練習後。クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージに敗れた試合後……。
宿舎で行った時もあればグラウンドの外野の芝生の真ん中で行ったこともあった。様々な場所で、様々なタイミングで指揮官としての声を発した。それはすべて、チームが前に進むうえで自らの言葉で選手たちを奮い立たせる必要があると思った時。戦う集団として、なにかキッカケが必要なタイミングだった。
「ほんのちょっとでいいので…」
しかし、今シーズン、一度だけ、チームの流れや状況を考えての行動ではなく、吉井理人という一人の人間としてミーティングを招集した時があった。それは5月14日、エスコンフィールドHOKKAIDOでのファイターズ戦。13時試合開始のデーゲームの練習前に選手たちをダグアウト裏のスイングルームに集めた。この日は「母の日」だった。
「皆さん、今日は母の日です。今日は皆さんの一番のファンであり、誰よりも応援してくれているお母さんのためにプレーをしてください。いつもより、ほんのちょっとでいいので、お母さんの事を想ってグラウンドにいってください」
その声は少し震えているようにも聞こえた。