SCORE CARD INTERVIEWBACK NUMBER
大谷翔平、菊池雄星と同じ“花巻東の背番号17”エース…巨人ドラ1ルーキー・西舘勇陽を支える“先輩からのアドバイス”「大事にしています」
posted2024/04/25 17:03
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
SANKEI SHIMBUN
花巻東高校の背番号17――西舘勇陽は高1の秋、この番号を託された。17番は、1年生だったときの菊池雄星、大谷翔平というふたりの先輩も背負っていた花巻東の大切な番号だ。
「17番は高校からの思い入れもありますし、すごく嬉しい背番号です。高校を選んだ理由のひとつがその2人(菊池、大谷)でしたから、僕にとっては夢とか憧れの存在です。高校時代に抱いていた想いは今も変わりませんし、近づいたなんて感じもしません。僕が高校から成長して進むより、もっと速いスピードで先を行っていますから、追いつくどころかどんどん離されています(笑)」
高1のとき、花巻東の出世番号を託された西舘は、3年の夏にはエースナンバーを背負って甲子園へ出場する。しかし鳴門戦でリリーフとして登板、5回3分の2を投げて6失点を喫し初戦で敗れる。プロへの夢はいったん封印、西舘は大学へ進むことを決めた。高校時代の菊池がマンダラチャートの真ん中に「高卒でドジャース入団」、大谷が「ドラ1 8球団」と書いたことで知られる花巻東の目標達成シートに、西舘は「中央大でエースになる」と書いた。
「でも大学時代、エースになれたと思っていないんです。ベイスターズに入った同学年の石田(裕太郎)が2年の秋に最優秀防御率賞を受賞して……石田はいつも安定していて、大事なところでも頼りになる。エースらしいピッチャーでした」
転機となった“クイック”という閃き
西舘は大学2年の秋までひとつも勝てず、投球回数以上のフォアボールを出すなどコントロールに苦しんでいた。しかし2年の秋が終わったとき、突然、閃きが降ってくる。
「冬の練習中、リーグ戦の振り返りをしていたら、投げている感覚がクイックのほうがよかったことに気づいたんです。だったらもう全球クイックで投げたらいいんじゃないかと……そのときはクイックの出力が落ちるというのはあったので横への並進の動きを意識的に強化しました」
クイックだけで投げると腹を括って、一冬越えた3年春、横の動きのトレーニングも功を奏して、それまで151kmだったマックスが155kmまで伸びた。クイックで一瞬のうちに出力を最大に持っていけるのは子どもの頃、スキーで雪山を駆けた経験が活きたのだという。
「小、中学校のとき、クロスカントリースキーをやっていて、全国大会にも出ました。その頃の僕は身体が小さくて、長い距離は苦手でしたが短い距離のスプリントは速かった。クロスカントリースキーはピッチングと同じ全身運動ですし、短い距離でどう力を入れればいいのかを経験していたのはクイックで投げるときの強みになったのかもしれません」