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チームメイトは「昔一緒に戦った選手の息子」という衝撃…スキージャンプ界のレジェンド・葛西紀明“51歳で海外W杯メンバー入り”の驚異
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/27 11:01
4季ぶりのW杯本選出場を決め、海外遠征のメンバーにも選ばれた51歳の葛西紀明。レジェンドの活躍は続く
「昨日の2本目も今日も、踏み切りでスキーがスリップしてパワーが抜けてしまった。スタートしたら緊張でパニックになったのか、『あれ、どうやればいいんだっけ』と思っているうちに飛んじゃっていた感じで。まだまだですね」
一方で、第1戦の試技のようなジャンプを2本揃えれば「確実に30位以内には行ける」という手応えも得たという。さらには「昨日の2本目と今日の予選で少しモチベーションが落ちたけど、その反面『何やっているんだろう、俺』という怒りもだんだん湧いてきて。そういう怒りがあるからこそ次は頑張りたいという気持にもなれるから、本当にいい経験をしたと思います」と、気持も前向きになった。
ちなみにこの札幌大会では、7位に22歳の二階堂蓮(日本ビール)が入った。前戦のレークプラシッド大会で8位になったのに続き、2度目のひと桁順位だった。二階堂は91年世界選手権に葛西とともに出場した二階堂学の息子だ。
また、今大会では2戦とも予選落ちだったが、昨季からW杯にフル参戦しているフランシスコ・チェコン(イタリア)は、葛西が90年代前半に「一番のライバル」と意識していたロベルト・チェコンの息子である。
「一緒に戦った選手の息子もいっぱいいます」
「昔一緒に戦った選手の息子というのも、今はいっぱいいますね。彼らと戦うこと自体はそんなに気にはならないけど……負かしてやろうって気持はあるし、一緒に戦っていること自体が、なんか面白いですね」
大会後の2月22日、葛西は3月1日のラハティ大会からのW杯海外遠征メンバーに選出された。実に4季ぶりの海外W杯メンバーに、51歳での復帰となる。挑戦する5大会の中には、得意とするフライングヒルも3大会含まれている。
「もう一回自分の調子が上がって世界で戦えるようになった時、現地に行くたびに『ノリアキ・カサイ』と声をかけてくれる人たちが、どういう風に応援してくれるか楽しみですね。『50歳の葛西が飛んでくるぞ』となったらすごく盛り上がると思う。その声援を聞きたいですね」
昨年の2月にはそんな風に目を輝かせて話していた葛西。
その夢がまず、3月にヨーロッパで実現する。