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チームメイトは「昔一緒に戦った選手の息子」という衝撃…スキージャンプ界のレジェンド・葛西紀明“51歳で海外W杯メンバー入り”の驚異
posted2024/02/27 11:01
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph by
JIJI PRESS
スキージャンプ界の“レジェンド”が、W杯の舞台に帰ってきた。
今季、2020年2月の札幌大会以来となる4シーズンぶりの「W杯本戦出場」を目標にしていたのは、51歳を迎えた葛西紀明だ。
札幌で行われた2月17日のW杯。
前日に行われた予選は、公式練習が激しい降雪で途中中断。14時予定だった開始時刻が17時に変更になるなど、タフなコンディションの中だったが、葛西は公式練習では125mで全体23位となるまずまずのジャンプを見せていた。
だが、実際に予選が始まると徐々に弱くなっていた向かい風が、ジャンプ競技では不利とされる追い風に変わった。
「ここ最近はずっと向かい風でしか飛んでなかったので、『追い風の中で飛んでおきたかったな』という不安が少しあった」と本人が振り返るように、予選の飛距離は106mに止まった。
悪コンディションも奏功…4季ぶりのW杯本選へ
それでも、悪コンディションの後押しもあってか、あとに続く海外勢も飛距離を伸ばせず。10番目の選手が飛んだ時点で、予選通過の50位以内が確定。570回というW杯本選の通算出場回数最多記録を更新した。
「ちょっとくらい失敗しても『なんとか行けるんじゃないか』という自信はあったんですけど……。このジャンプ台は4時頃になると追い風に変わる。でも、公式練習の時はまだ向かい風が残っていて、それに乗ってしまった。
予選は予想通りに追い風になった中で、前の選手のジャンプを見て『何mくらい飛べば予選を通過できるだろう』とか、いろいろ考えていたら、めちゃくちゃ緊張してしまって。滑りはよかったけど飛び出しでタイミングがずれて、踏み切りが遅れてしまいました。ヤバいなと思ったけど、追い風はドンドン強くなってくるから、後ろの選手もきついだろうなと思って。最後まで記録を見ながら、ずっと“呪い”をかけていました(笑)」
実は昨年もW杯札幌大会の予選には出場しているものの、体調不良者が出たために急遽、決まったものだった。
「昨年も調子は悪くなかったんですが、直前の札幌のコンチネンタル杯ではうまく風が当たらず『流れを逃したな』とガックリしていて。それで一度減量も止めて、暴食をして気持も落ちていたタイミングで『代表に選ばれた』となったので。一瞬、断ろうかと考えたけど『これもなかなかないチャンスだな』と思って出たんですが……どうせならもう少し調整して出たかったというのはありますね」