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平野歩夢「怒りしかない」不可解採点を見返す神演技、りくりゅうの「ありがとう」、小林陵侑が高梨沙羅をハグ…北京五輪名場面のウラ側
posted2022/12/30 06:05
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Asami Enomoto,Naoya Sanuki/JMPA
<名言1>
怒りしかありませんでした。
(平野歩夢/NumberWeb 2022年2月12日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/852024
◇解説◇
数多くのスポーツイベントが沸きに沸いたため、遠い昔のように思えるが……今年に入って日本列島をまず沸かせたのは北京冬季五輪でのアスリートたちの躍動ぶりだった。特にニューヒーローとして文字通り頂点に上り詰めたのは、平野歩夢だろう。
2月11日のスノーボードハーフパイプ、平野は青空を突き抜けるかのような高いジャンプと超絶技巧を、北京の空に描いた。
1本目から早くも、昨年12月の国際大会で世界初成功を遂げた「フロントサイドトリプルコーク1440」を成功させる。最後の着地で失敗し得点が伸びなかったが、本領を発揮したのは2本目だった。フロントサイドトリプルコーク1440、 キャバレリアルダブルコーク1440、 フロントサイドダブルコーク1260、バックサイドダブルコーク1260、フロントサイドダブルコーク1440テールグラブ。かつてなかったハーフパイプ史上最高難度の構成を、ミスなく成功させた。
今の自分のパフォーマンスのマックスを出せた
これで平野の金メダルは確定――と思われたが、得点はまさかの「91.75」。直前にトップに立ったスコット・ジェームズの「92.50」に及ばなかったのだ。これには現地の各国コーチや選手からも大きなブーイングが起きたほどだ。
普段からクールな表情と言葉の平野だが、2本目の採点に対しては「怒り」という表現を使った。ここで気持ちに揺らぎがあっても何の不思議もない。
しかし並外れたメンタリティと技量を見せたのは、最終3本目のことだった。2本目と同じ構成にするか、もう1つの新技「フロントサイド1620」を組み込むのか。平野の選択は完成度を高めた前者を選び、2本目からさらに精度を上げて「96.00」と文句なしの逆転を果たしたのだ。
平野は演技後、こう語った。
「練習を含めても、いちばんいい滑りを最後の最後で出せたのではと思います。とにかく練習以上のことができた。今の自分のパフォーマンスのマックスを出せたので、すごく納得しています」
なお今大会限りで引退し、平昌五輪では平野と名勝負を繰り広げたショーン・ホワイトも、北京五輪での演技後、平野に直接「マジですごかった」といった感じで称えるとともに、こうリスペクトした。