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チームメイトは「昔一緒に戦った選手の息子」という衝撃…スキージャンプ界のレジェンド・葛西紀明“51歳で海外W杯メンバー入り”の驚異
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/27 11:01
4季ぶりのW杯本選出場を決め、海外遠征のメンバーにも選ばれた51歳の葛西紀明。レジェンドの活躍は続く
結局、昨年は0.4点差の僅差で本戦出場を逃していた。
ただ、それでも意識は前向きだったという。
「ここ2~3年のどん底からは少しずつ抜け出してきているし、W杯メンバー6人のお尻は見えてきていた。『これはちょっと調子がよくなればいけるぞ』という自信も持てているのでそんなに悔しくないですね。逆にW杯でも『ちょっといけるかな』という期待感も出てきました」と話していた。
体力もまだ衰えていないという自負はあるというが、それ以上に数年前からジャンプは「筋力だけではない」ことに気づいてきたという。
最大の課題だった「踏切の瞬間にスキーが後方にスリップして、力を伝えきれない」という弱点に対しても、22年からコーチに招聘したマティアシュ・ズパンコーチ(スロベニア)の指導を受け、長いストロークで力を伝え続けるスロベニア流の踏み切り技術を取り入れた。そんな新しい取り組みに手応えも感じ始めていた。
「昨秋くらいから調子も上がってきたし、11月のスロベニア合宿でも自分のレベルがどれぐらいなのかは確かめられたので。スロベニアのW杯メンバーの下の1Aチームと一緒になったけど、前の年はゲートも彼らより7~8段くらい上から出ないと同じくらいの飛距離を飛べませんでしたが、今回は3段ぐらいの差になってきた。
なので『あ、だいぶ縮まったな』という自信をつけて帰ってきました。でも僕は一気に調子が良くなるわけではないので、名寄や札幌の国内大会やコンチネンタル杯、W杯というふうに、一歩一歩順序よく行こうかなと思って。その点では順調に来ていると思います」
1月のコンチネンタル杯札幌大会第1戦は日本人トップの11位に入ると、2月3日のTVh杯では50代選手として史上初優勝。今年は昨年とは違い、W杯予選のチケットを自力で手にした自信もあった。さらに1日2食は「サラダとスープだけ」というシーズン中の減量も続けた。
W杯本選も本番前の「試技」ではよいジャンプだったが…?
翌日、迎えた570回目のW杯の本選。
15時から始まった本番前の試技では、最後までほぼ同じ向かい風という条件の中で、全体25位となる126mを飛んだ。踏み切りは今目指しているスムーズな動きで、ジャンプ台にしっかり力を伝えるものだった。日本代表チームの作山憲斗ヘッドコーチもこう評価する。