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山本由伸25歳=12年465億円、上沢直之29歳は最大で年俸約5億円…“メジャー契約金格差”のナゼ「大谷翔平の打撃+有原・千賀の成績」にヒント?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki/JIJI PRESS
posted2024/01/20 11:00
山本由伸と上沢直之。ともに昨季まで長年パ・リーグの主戦投手を務めたが、メジャーの契約金の差はどこから生まれるのか
まず今永の方が5歳年長だったこと。そして山本がここ3年、リーグで他の追随を許さない成績を残していたのに対して、今永が3年前には規定投球回数未達で、4年前には不振で9試合しか投げていないことも考慮されたのだろう。いわば山本に比べて今永は「エビデンス」が足りなかったのだ。
上沢は2人に比べて、K9、K/BBともに劣る。上沢はパワーピッチャーというより、打たせて取るタイプ。打たれながらも辛抱強くしのいで投球回数を稼ぐ「イニングイーター」なのだ。技術や打者との駆け引きで、実績を積み上げる投手と言っても良い。
「いや、パワーピッチャーでなくてもいいじゃないか。イニングイーターでも、チームに勝ちを手繰り寄せることができるなら、先発投手として通用するのではないか」
という意見もあろう。
もちろん原則的にはそうなのだが、NPBとMLBでは環境が大きく異なる。「フライボール革命」以降、MLBの打者は「バットスイングをより速くする=打球速度を上げる」ことに集中してきた。打球速度を上げることができれば、安打、本塁打が出る可能性が高まる。MLBが公表している「スタットキャスト」によれば、大谷翔平の打球速度は最大で190km/hをオーバーしている。これはMLB全体でもトップクラスだが、このバットスイングなら打ち損ねと思った打球でもフェンスを越えてしまう。大谷がしばしば反対側にホームランを打ち込むのは、圧倒的な打球速度があったから。
上沢のような打たせて取るタイプの場合、NPBであれば「フライに打ち取ったはず」の打球が、MLBではホームランや長打になる可能性が高まるのだ。
有原、千賀の成績を参考にしたのでは
MLBの関係者は、おそらく近年MLBに移籍した有原航平、千賀滉大という2人の先発投手の成績を参考にしていたのだろう。彼らのMLB移籍直前のNPBでの成績とMLBでの成績を比較してみよう。
〈有原航平:2020年 28歳 北海道日本ハムファイターズ〉
20試合8勝9敗132.2回 106奪三振 防御率3.46(3)
K9=7.22、K/BB=3.53
※MLBでの成績 レンジャーズ2021年
10試合2勝4敗40.2回 24奪三振 防御率6.64
〈千賀滉大:2022年 29歳 福岡ソフトバンクホークス〉
22試合11勝6敗144回 156奪三振 防御率1.94(2)
K9=9.75、K/BB=3.18
※MLBでの成績 メッツ2023年
29試合12勝7敗166.1回 202奪三振 防御率2.98(2)