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山本由伸25歳=12年465億円、上沢直之29歳は最大で年俸約5億円…“メジャー契約金格差”のナゼ「大谷翔平の打撃+有原・千賀の成績」にヒント?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki/JIJI PRESS
posted2024/01/20 11:00
山本由伸と上沢直之。ともに昨季まで長年パ・リーグの主戦投手を務めたが、メジャーの契約金の差はどこから生まれるのか
有原は、K9が低いことでもわかるように――日本ハム時代の後輩である上沢と同じ、イニングイータータイプの投手。2020年オフにポスティングでレンジャーズと2年総額620万ドル(当時の為替レートで6.4億円程度)で契約した。しかし2021年、有原は右腕の故障で戦線離脱。復帰後も成績は伸びなかった。翌年はキャンプ招待選手(NRI)となり、メジャー昇格は果たしたものの、成績は上がらず。昨年ソフトバンクに入団してNPBに復帰した。
2023年は山本由伸との「先発対決」で3勝1敗。有原はNPBでは依然として一線級の力を有している。しかしMLBでは結果を残すことができなかった。
一方、千賀はK9が「9」を優にオーバーするパワーピッチャー。K/BBが3そこそこと制球力にやや難があったが2022年オフに海外FA権を行使して5年総額7500万ドル(当時のレートで約105億円)で契約。1年目から規定投球回数に達してリーグ2位の防御率2.98を記録。77の与四球はリーグ5位だが、奪三振能力の高さでメッツのエース格にのし上がった。
こうした経験もあって、MLBサイドは、NPBからMLBに移籍して通用するのは「パワーピッチャータイプ」で「イニングイータータイプ」ではない、という見方をしていたのではないか。
もちろん、トラックマンやホークアイなどの弾道測定器のトラッキングデータから、各投手の投球の「成分分析」は十分に行ったうえでの判断ではあろう。
不利な条件でも挑戦する上沢にエールを
しかし、そんな不利な条件でもMLBに挑戦しようとする上沢直之の「その意気やよし」である。日本ハムの先輩、そしてオリックス時代には沢村賞、MVPを獲得した金子千尋は、X(旧Twitter)でこんな言葉を投げかけている。
〈上沢は自分自身を知っている。
だからやるべき事を知っている。
そして上沢は現状で満足する事を知らない。
そんな上沢直之は必ずやってくれると信じている!
頑張っていることも知ってる!でも言わずにはいられない。
頑張ってこい〉
自身は沢村賞、MVPを獲った2014年オフにポスティングでの移籍を目指していたが、故障のためにかなわなかった。その想いも含めて、後輩の上沢の背中を強く推したのだろう。
筆者も同じ思いで上沢を応援したい。