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山本由伸25歳=12年465億円、上沢直之29歳は最大で年俸約5億円…“メジャー契約金格差”のナゼ「大谷翔平の打撃+有原・千賀の成績」にヒント? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki/JIJI PRESS

posted2024/01/20 11:00

山本由伸25歳=12年465億円、上沢直之29歳は最大で年俸約5億円…“メジャー契約金格差”のナゼ「大谷翔平の打撃+有原・千賀の成績」にヒント?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/JIJI PRESS

山本由伸と上沢直之。ともに昨季まで長年パ・リーグの主戦投手を務めたが、メジャーの契約金の差はどこから生まれるのか

〈山本由伸:25歳 オリックス・バファローズ〉
23試合16勝6敗 164回 169奪三振 防御率1.21(1)

〈今永昇太:30歳 横浜DeNAベイスターズ〉
22試合7勝4敗 148回 174奪三振 防御率2.80(10)

〈上沢直之:29歳 北海道日本ハムファイターズ〉
24試合9勝9敗 170回 124奪三振 防御率2.96(7)

 いずれも規定投球回数に達し、防御率は3点を割り込んでいる。

 山本と今永は昨年のWBCに出場し、ともに先発投手として活躍。世界にアピールできたのが大きかったのかもしれない。山本は25歳と3人の中では一番若く、成績も一番良い。NPBの先発投手ナンバーワンに与えられる沢村賞とMVPを3年連続で受賞している。

 今永は「左腕」であることが大きかった可能性はある。MLBでも左腕投手は少なく、ましてや先発で投げられる左腕は貴重ではある。

MLB投手のトレンドである“2つの数字”とは

 一方で上沢の成績を見ると、2人と比べても遜色ない数字を残している。3人の中で最も多くのイニング数を投げているし、勝ち星では今永を上回り、リーグこそ違うが防御率の順位でも今永より上位に位置する。

 しかし上沢は、今永との比較でも20数分の1という小さな契約に甘んじた。ここには、MLBの投手に関する昨今のトレンドが大きく影響している。

 端的な数字を2つ挙げると、「K9」と「K/BB」というもの。

 K9はその投手が9回を投げたときに何個の三振を奪うかという数字。K/BBは奪三振数÷与四球数、投手の安定感を示す重要な指標である。以下、3人の昨季成績である。

・山本由伸:K9=9.27、K/BB=6.04(164回28与四球169奪三振)
・今永昇太:K9=10.58、K/BB=7.25(148回24与四球174奪三振)
・上沢直之:K9=6.56、K/BB=3.02(170回41与四球124奪三振)

 K9は「9」を超えるとパワーピッチャー、つまり三振をバッタバッタと奪う投手とされている。三振は「振り逃げ以外では絶対に走者を許さない」という、投手にとって最も安全なリザルトだとされる。そのため、三振が奪える能力は投手にとって何物にも代えがたい。対照的に四球は「打者へ安全に一塁を与えてしまう」最も残念なリザルトとして捉えられている。自ずと四球を与える投手は、評価が低くなる。K/BBは、3以上で合格点、5で優秀、6でリーグトップクラスと言える。

今永が由伸よりも“低評価”だった要因と、大谷の打撃

 今永はK9でもK/BBでも山本を上回っている。ではなぜ山本よりもMLB球団の評価が低かったのか? それは複数の要因がありそうだ。

【次ページ】 有原、千賀の成績を参考にしたのでは

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