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「迷惑かけました…」波乱のドラフト“ウラ側”、ロッテ吉井監督が苦笑い…「おおぉぉ!」プロ野球スカウトの予想も外れた“まさかの”1位指名
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/10/27 17:43
10月26日ドラフト会議。12球団の最初の指名では4選手が競合となった。結果的にくじは7回、史上最多となった
声援を浴びながらくじを引いた新監督に、現役時代さながらの勝負強さは残っていた。格子柄のスーツに黒マスク姿で独特のオーラを放つ日本ハム・新庄剛志監督が開封前のくじを左胸に押し当ててポーズを取るなかで、阿部監督が右腕を突き上げ大きくガッツポーズ。44歳の指揮官が見せた弾ける喜びに、後方に座っていた阪神タイガース・岡田彰布監督も「おー!」と愉快そうに大笑いだ。
プロ野球スカウトの予想が外れた「1位指名」
この日一番のどよめきが起きたのは、社会人ナンバーワン野手のENEOS・度会隆輝外野手をめぐる指名劇だ。事前に公表していた中日ドラゴンズに続き、横浜DeNAベイスターズが指名すると、会場は「おおぉぉぉ!」と大盛りあがり。さらにそのすぐ後に千葉ロッテマリーンズの指名が読み上げられると「ウオォぉぉぉ」とどよめきはさらに広がり、場内のボルテージは最高潮に達した。
実はドラフト直前、スカウトの間では度会に関して「1位指名する球団はないのでは」という情報も飛び交っていた。ところが、お忍びで直接試合を見て心に決めた立浪和義監督の強い意向で中日ドラゴンズが前日の25日に1位指名を公表。“一本釣り”も可能かと思われていただけに、3球団の競合は予想を上回る展開だったわけだ。
三つ巴のくじ引きバトルの勝者は、DeNA・三浦大輔監督。最終的に度会指名が決まったのはドラフト会議当日で、指揮官には会場入りのため控え室から出る時に伝えられたのだと言う。
「(交渉権獲得の瞬間は)一気に心拍数が上がりましたね。興奮しました。手を入れて最初に触れた封筒をひこうと決めていましたから、どこにあったかはわからないですけど」
地元・横浜高校出身のスターを迎え入れる権利を手にした指揮官に「番長!」の掛け声が飛ぶ。「横浜スタジアムで待ってます」と呼びかけたトレードマークのリーゼントヘアは、いつになく誇らしげな光沢を放っていた。
「迷惑かけました…」
一方で、くじ運に泣いたのがロッテの吉井理人監督だった。実は「度会1位」の方針は早々に決まっていたそう。中日が1位指名を公表していたことについては、「マリーンズも言わなかっただけで、早くからそう聞いていたのでね。こちらは『あいつ後から来よった』っていう印象ですかね。言う、言わないは勝手なんで」と嘆き節だ。