一方で、スライダーやカーブ、チェンジアップでもカウントが作れ、スプリットも加えた「曲がり球たち」でタイミングを外して打ち取れる。  

　先発の4イニングで3安打の1失点にまとめて、「オオッ！」と思ったのは、最後の打者の封じ方だ。初球から、スライダー、カーブ、スプリット……3種類の変化球を1球ずつ投げて、空振りの三振を奪ったから驚いた。

　大学生でも、変化球の球種を変える時は球道がブレがちになるものだが、変化球3球種で3球三振なんてそう出会えるもんじゃない。

「変化球のコントロールは自分の中でもいちばん自信があるし、大切にしています。左で変化球が得意っていうピッチャー、そんなにいないと思うんで」

　外柔内剛……フラットなもの言いが、いかにも「ピッチャー」である。

　ならば、どうしてこんなサウスポーが隠れていたのか？

　2年生の時に左ヒジを痛めて、トミージョン手術をしていた。時間をかけてリハビリに励み、最後の秋がリーグ戦デビューとなる。

　スカウトたちにも、その存在はほとんど知られていない。エース・古謝樹を見に来たスカウトたちに、「なんだ、こいつ……！」と思わせる秋になる。

【3】明治大・石原勇輝投手「精神面の成長で飛躍」

　明治大の試合を見に行くと、いつも気になって仕方ない投手がいた。

　エース・村田賢一（181cm90kg・右投右打・春日部共栄高）……じゃない。村田投手はいつもいいから、任せて安心。だから、かえって気にならない。

　ついついブルペンに目が行ってしまうのは、この左腕が投げ始めた時だ。

　明治大・石原勇輝投手（180cm85kg・左投左打・広陵高）が今日も素晴らしい腕の振りで150キロクラスの快速球を投じると、いっしょに帽子も飛んでいる。

帽子を飛ばすほどの首振りがなくなったという明治大・石原勇輝 ©︎SANKEI SHIMBUN

　テークバックを上体の向こう側に隠しながら、110キロ台のカーブも快速球も、「魔球」と称したいほどのチェンジアップも、同様の猛烈な腕の振りで投げられる。こんな打ちにくい左腕、なかなかいないだろう。そう思いながら、実際はちょいちょい相手打線につかまっていた。

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