大人の頭の重さは、体重の8分の1とも、7分の1ともいわれる。そんな重たい頭の乗っている首を振って投げれば、リリースポイントもバラつく。石原投手にも、その傾向を感じていた。

　それが、この夏のオープン戦を何試合も見ると、首を振らなくなっている。リリースに過剰な力感がなくなって、いかにも楽に、快適そうに投げているように見える。結果としてストライク先行の投球になって、お得意の緩急が冴えている。

　サウスポーとしての高い才能をいくつも併せ持って、そこに「投げるコツ」みたいなものが見えてきたとすれば……？

「今度帽子が飛んだら、メンバー外すぞ！って言ったら、飛ばなくなったんですよ（笑）」

　田中武宏監督、冗談めかしてそう言ったあとで、

「石原は精神的な面で、4年生になってからものすごく成長しました。ホウレンソウ……報告、連絡、相談ができるようになってから、チームメイトや自分たちとも自然なコミュニケーションがとれるようになって、野球も学生生活も、ずいぶん楽になったんじゃないですか。『いいボールさえ投げてりゃ、抑えられるんだろ』じゃなくて、聞く耳も持てるようになって。間違いなく、頼りになるピッチャーになりつつあります」

  広島・広陵高で同期だった投手たちが5人も関東、関西の強豪大学に進み、明治大でも村田投手だけじゃなく、やはりドラフト候補の蒔田稔投手（178cm85kg・右投右打・九州学院高）も、同期生に控える。

　高校、大学の7年間、いつも高いレベルでライバルたちが何人もいた環境で、激烈なサバイバル競争を勝ち抜いてきた事実は、この左腕の大きなアドバンテージになっているはずだ。

「上位3人」…に入らない素材をどう見極める？

  9月に入って、ドラフトまであと50日を切った。

  今年は各球団とも「上位3人」に確かな人材が獲得できそうな気配があるだけに、「まず誰にするよ？」というところで頭が痛いドラフトになりそうだ。

  しかし、最初の3人で安心してはいけない。4位、5位にも、なかなかの素材が何人も残っているはず。そんな「重たいドラフト」が、まもなくやって来る。