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村田兆治が逆ギレ…ノーサインなのに「何投げさせてるんだ!」理不尽を受け入れたロッテ名捕手が語る“落合博満が電撃トレード後”のチーム事情
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2023/08/04 11:05
かつてロッテでプレーし、村田兆治を「ノーサイン」で捕球していたことで知られる袴田英利
がっかり助っ人・マドロック加入
三冠王を放出したロッテは87年、5位に沈む。翌年、落合の穴を埋めようとメジャーリーグで4度の首位打者に輝いた37歳のビル・マドロックを獲得した。袴田が振り返る。
「キャンプの時から状態が良くなかったですね。紅白戦の前、有藤さんに『球種を教えて打たせろ』と言われましたから。それくらい調子が上がっていなかった。シーズンでもセーフティバントしていました。サードが警戒していないので成功しましたけど、それは違うだろって思いましたね」
年俸1億円を超えそうな落合をトレードしながら、マドロックには1億3000万円を支払った。川崎球場に個室のロッカーを設けるほどのVIP待遇で迎えられた“狂犬”は鳴りを潜めた。矛盾を露呈した球団は史上2度目の最下位に転落した。
村田兆治の激怒「ノーサインなのに…」
89年、袴田は前年の110試合から58試合と出場が激減する。主にルーキーの福澤洋一がマスクを被ったが、打撃面でも守備面でも袴田を上回ったとは言えなかった。首脳陣は年齢を盾にベテランを控えに回した。
それでも、村田兆治の先発試合では全て袴田がスタメン出場した。この年の村田は例年にも増して、鬼気迫る形相で投げていた。5月13日の日本ハム戦で念願の200勝達成した後も意欲は全く衰えなかった。
39歳の大ベテランは6月14日の近鉄戦で延長12回208球完投、7月19日の西武戦で延長12回188球完投と尋常ではない球数を放っていた。気付くと、13年ぶりの最優秀防御率のタイトルを狙える位置にいた。最終登板となる10月8日のオリックス戦、村田は並々ならぬ決意でマウンドに登った。