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村田兆治が逆ギレ…ノーサインなのに「何投げさせてるんだ!」理不尽を受け入れたロッテ名捕手が語る“落合博満が電撃トレード後”のチーム事情
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2023/08/04 11:05
かつてロッテでプレーし、村田兆治を「ノーサイン」で捕球していたことで知られる袴田英利
落合博満「電撃トレードの謎」
球団と選手の歪な関係性に疑問を投げかけ、自らの商品価値を訴えたのが落合博満だった。ランディ・バース(阪神)との三冠王対談で、セ・リーグでプレーしたいチームを聞かれると〈自分を高く買ってくれるとこだったら、どこでもいい。〉(Number /86年1月20日号)と答えた。
年俸こそが自分の評価だと正論を吐く異端児をロッテは煙たがった。3度目の三冠王を獲得した86年オフ、稲尾和久監督が辞任すると、落合は「来年は違うチームでプレーしているかもしれない」と発言し、トレード騒動が勃発。新監督の有藤道世と落合の確執説を放出の根拠に書き立てるメディアもあった。
果たして、真相は何だったのか。引退直後の著書に、落合はこう綴っている。
〈ある関係者から次のような真相を聞かされた。
球団は、来季の監督を引退した有藤さんに要請するつもりだった。稲尾さんの手腕は高いがロッテの出身ではない監督が続いていたので、ミスター・オリオンズとして貢献してきた生え抜き監督を誕生させたかったようなのだ。そして、要請する際の条件のひとつに私のトレードがあった。生え抜きの新監督誕生に伴って、チームのイメージも変えたい。それには、ミスター・オリオンズの座を有藤さんから奪った私がいてはまずいということなのだ。〉(著書『野球人』/98年12月発行)
素直に読めば、“球団が”イメージ刷新のために落合の放出を画策したと取れる。一方、“有藤が”そう望んだと推測する人もいるだろう。2人の確執説は未だに蔓延っている。トレード騒動の真っ只中、有藤はこんなコメントを残している。
〈ボクは全然(トレードに)出すとも考えていないし、会社にも、監督引き受けたときに“オチは出せない、絶対必要やから”とお願いしてあるんですよ。〉(週刊ベースボール/86年12月8日号)
時が経っても、有藤の発言は一貫している。
〈落合のトレードに関しては、僕はいっさいタッチしていない。だいたい、自分が監督になること自体を知らなかったんだから。(中略)考えてもみてください。落合は「日本一の四番」ですよ。仮に彼のことをどれほど嫌いだったとしても、出すわけがないでしょう。〉(『俺たちのパシフィック・リーグ ロッテ・オリオンズ80's』/2022年6月発行)