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メジャー球団を驚かせた“史上最も過小評価”の日本人ピッチャー…阪神ファンが泣いた“村山実の伝説”「岡田彰布が大ファン」「シーズン防御率0点台」
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph byMakoto Kenmizaki
posted2023/07/03 11:01
戦後唯一の「シーズン防御率0点台ピッチャー」村山実(阪神)の伝説とは
引退試合の練習で…奇跡の話
村山は燃え尽きるように61歳の若さで世を去った。葬儀の弔辞に立った金田正一は、「一球たりとも手を抜かず、マウンドで全身全霊をつくして投げた村山実は投手の鑑だった」と称えた。
その言葉の通り、命がけの投球だった。だが、決してけんか投法ではなかった。300打席を超えた生涯のライバル・長嶋との対戦でもデッドボールは一度もなく、常にフェアだった。そんな村山には、野球の神様に愛されたとしか思えないエピソードがある。
現役を引退した翌1973年、巨人とのオープン戦で引退試合が用意された。その数日前、投球練習をしておこうと考えた村山は、近所に住む阪神ファンから村山の大ファンという中三の息子を紹介されてキャッチボールをした。その人物こそ、現阪神監督の岡田彰布少年だった。
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さらに村山が他界した1998年8月22日。村山が奮戦した甲子園のマウンドに立った横浜高校の松坂大輔は、この日、決勝戦でのノーヒットノーランという夏の甲子園史に残る快挙を達成した。
葬儀の日、ミスタータイガースを乗せた霊きゅう車を大勢の阪神ファンが囲んだ。命がけで投げ続けた投手を惜しむ、六甲おろしに包まれながら。
参考資料 『村山実「影の反乱」』(ベースボールマガジン社/2014年)
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