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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「ウチでは獲れません」古橋亨梧は何度も涙した…中央大恩師が明かす“プロ入り秘話”、獲得したJ2監督「本当にどこも獲ろうとしなかったんですか?」
posted2023/04/09 11:07
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
MATSUO.K/AFLO SPORT
興国高校を卒業し、中央大学へと進んだ古橋だったが、2年時に中央大監督の佐藤健から興国高校・内野智章監督のもとへ連絡が入る。「最近、亨梧のプレーが良くないんだよ」
内野が見た“痛い10番”
内野は大阪から新幹線に飛び乗った――。
試合が始まっても、古橋は本来のキャラとは異なるプレーを連発した。相手ディフェンスの背後への動き出しは少なく、背番号10の司令塔かのように、頻繁に中盤に下がってはシンプルにパスをはたく。ただし、味方からのリターンパスが来なければ天を仰いで足を止めていた。ドリブルを仕掛けても強引さばかりが目立ち、攻撃から守備への切り替えが遅い。自陣深くまでスプリントして守る献身性も消えていた。孫悟空は、“痛い10番”になっていた。
試合終了と同時に、内野は席を立った。古橋にも、佐藤にも声をかけることはなかった。大阪へと戻る新幹線の車内で携帯電話を取り出すと、約3000字にも及ぶ怒りのメールを古橋宛に送った。
〈自分ではカッコイイと思っているのかもしれないけど、俺は久しぶりにお前を見て恥ずかしくなったわ。帰りたくなったわ。確かに中盤に下がる10番的なプレーも身に付けろとは言ったけど、今のお前は“なんちゃって10番”。勘違いしている裸の王様や〉
怒りの3000字メールに古橋は…
すぐに古橋から返信が届いた。
〈すいません〉
キャラに似合わないプレースタイルになっても、恩師の言葉に耳を傾ける素直さは変わっていなかった。だから、内野は古橋の電話を鳴らした。
「メールにもボロカス書いたけど、お前は本来、そうじゃないやん。お前の良さは何やねん? ハードワークでしょ。スプリントでしょ。中学の頃、俺がなんて声をかけたか覚えてる? 裏抜けでしょ。10番ぶっていたけど、今日、得点かアシストがあったか? 亨梧、お前のプレーってそんなんじゃないよね?」
プロ、行くんだろ?
この言葉がどれくらい響いたのか、内野にはわからない。でも、この一件以来、佐藤から古橋のプレーについて“愚痴”の電話が来ることはなくなった。