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「ウチでは獲れません」古橋亨梧は何度も涙した…中央大恩師が明かす“プロ入り秘話”、獲得したJ2監督「本当にどこも獲ろうとしなかったんですか?」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2023/04/09 11:07
J2のFC岐阜からプロ生活をスタートさせた古橋。そのプロ入りまでの道のりは平坦なものではなかった
「精神的に逞しくなっていたとはいえ、根は優しくて、繊細なヤツですからね。『もうダメですかね。プロは無理ですかね』って、だんだんと弱気になっていった」
気がつけば、大学4年の11月になっていた。佐藤にはプロ入りへの確信、古橋には確固たる意志があったから、一般企業への就職活動はしていなかった。J3クラブの練習参加も視野に入れ始めたところに、あるニュースが飛び込んできた。
うちにすごく良い選手がいるんだ。1回、見てくれないか
『大木武氏、J2・FC岐阜の監督に就任』
佐藤と大木(現ロアッソ熊本監督)は、現役時代に住友金属と富士通でしのぎを削った間柄だ。大木がJクラブで指導者となってからも、顔を合わせるたびに言葉を交わしてきた。攻撃的なチームを作り上げ、年齢を問わず技術と能力のある選手を起用する大木ならば、古橋の良さをわかってくれるはず。すぐさま佐藤は、大木と岐阜のスカウトに電話をかけた。
「うちにすごく良い選手がいるんだ。1回、見てくれないか」
それまでは練習参加のたびに期待を抱き、落胆する日々だった。ところが“目利き”と出会ったことで、扉はすぐに開いた。佐藤は岐阜から戻ったばかりの古橋に知らせた。
「岐阜、決まったぞ!」
古橋は、また泣いていた。やっと流した嬉し涙だった。
うちですぐレギュラーになりますよ
続いて佐藤は、感謝を伝えるために大木の電話を鳴らした。すると、弾んだ声が返ってきた。
「古橋って、本当にどこも獲ろうとしなかったんですか? うちですぐレギュラーになりますよ」
2016年12月22日、FC岐阜のホームページにこう掲載された。
『古橋亨梧選手(中央大学)、来季加入内定のお知らせ』
大木監督の就任発表から、わずか1カ月後の出来事だった。