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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本代表のFW陣は「気を遣いながらプレーしている」…上田綺世がコロンビア戦で見せた“ゴールへの渇望”「得点を狙うのはエゴではない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2023/04/01 17:04
日本代表での初ゴールがなかなか決まらない上田綺世だが、「苦しいとは感じていないです。これもキャリアの一環」と前を向いた
いまだ代表では無得点も「苦しいとは感じていない」
先に名前をあげた歴代の日本代表FWは、自らが培った「日本流」とヨーロッパで求められるストライカーの違いに苦闘した。自らの武器である献身性や泥臭いプレーを評価してくれはするものの、得点数が少なければ「生粋のストライカー」とは呼ばれない。
所属するセルクル・ブルージュで、1トップではなく2シャドーの一角として起用されることが多い上田にも、同じような葛藤があるのかもしれない。とはいえ、ベルギーでの上田綺世が“点取り屋”であることに異論を呈するものはいないだろう。
それにしてもなぜ、これだけの選手が日本代表でまだ1得点も決められていないのだろうか。不躾にも本人に直接聞いてみたが、「いろいろあるけれど、ここでしゃべることではない」ときっぱりと口を閉ざされた。
「ならば、今、苦しいですか?」と重ねて聞いた。
「苦しいとは感じていないです。これもキャリアの一環。常に点が取れればいいですけど、FWを十何年やっていれば、取れない時期、取れない環境はいくらでもあった。もちろん、葛藤することもあるかもしれませんが、それでもやり続けて今の自分があるので。別にそれが苦しいとか……たとえ苦しかったとしても、関係ないのかなと思います」
上田にしてみれば、苦闘も「普通にあること」なのだろう。些細と思えるほど小さな課題解決に悩み、考え、挑戦し、答えを出していく。それをピッチで表現する。ゴールを叩き出す。その繰り返し、継続が今の上田綺世を形作ってきた。揺るぎない自信があるからこそ、彼は悩んでいても、苦しくはないのかもしれない。
コロンビア戦、最初のヘディングシュートがGKにはじき出された直後、彼が見せた感情の発露からは、ゴールへの渇望が感じられた。
エゴイストであるべきか、献身的であるべきか。
日本代表のストライカーがその2択で思い悩むことがなくなったとき、彼らの眼前には「新しい景色」が広がっているのかもしれない。
<前編から続く>
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