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心が壊れた「世紀の落球」をネタに…なぜ? G.G.佐藤が語る“人生激変の北京五輪後”「野村さんの助言はすごく響きました」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byYuki Suenaga
posted2023/02/27 11:01
2008年北京五輪で二度フライを取り損ねたG.G.佐藤は悪夢を受け入れ、近年では自ら落球の話題を発信している。なぜ、吹っ切れたのか
「清田の行いが良いなんて全く思っていません。ただ、失敗した人をバッサリ切る社会でいいのか。どんな人にも立ち直る機会を与えるべきだと思います。自分も失敗したけど、チャンスをもらえた。清田には野球に対する熱い気持ちがあったから、僕から声を掛けました。清田もNPB復帰は無理だとわかっている。自分の中で何かしらの区切りをつけたいんですよ。どこかのリーグで1打席立てればいい。今は独立リーグにも入れない状態ですから」
G.G.は北京五輪の落球で名声を失った。しかし、何物にも代えがたい“感性”を手に入れた。
“過去を変えた”ことになるのかな
「当時の僕は『地球は自分のために回っている』と考えてしまうほど調子に乗っていた。だから、神様が罰を与えたのかもしれません。『天狗になるな』というメッセージだったような気がしますね。もし金メダル獲って『キモティー!』と叫んでいたら、人がたくさん寄ってきて、知らぬ間に悪事に手を染めていたかもしれない。落球して初めて、失敗した人の気持ちや心の痛みをわかるようになりました」
何が起こっても、時間は前にしか進まない。残酷な現実である。しかし、時の経過が想像すらできない未来を生むこともある。
「『死にたい』と思った体験も、今考えればアッという間だと実感できた。それこそ、最近は友達に『G.G.おいしかったね』とさえ言われるようになった。これは、“過去を変えた”ことになるのかなと」
タイムマシーンに乗らなくても過去は変えられる――。北京五輪の落球から15年近くが経って、G.G.佐藤はそんな心境に達している。
〈つづく〉
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