——しかし彼の戦略は決して一般的ではありません。どの監督も彼のように実践するとは思えません。またスペインも日本の戦い方を予めわかっていて、前半はドイツほどには攻めずに多少注意深く戦っていました。そして後半に日本がプレスをかけて圧力を強めることも。それでも失点を喫してパニックに陥ってしまいました。

トルシエ　スペインはそこまで考えていなかっただろう。日本が（ドイツ戦と）同じように戦うのは大いにありうるが、スペインはそれが問題だとは思わず十分に対処しうると考えていた。日本が同じことを2度やり遂げるのは不可能と思っていたはずだ。

　だからこそこれは偶然ではないしまぐれでもないと私は言いたい。戦略でありノウハウだ。それが可能なのは久保や前田（大然）、三笘（薫）、伊東（純也）、堂安（律）、浅野（拓磨）がいるからであり、彼らは攻撃的でスピードがあり相手を挑発する。日本は攻撃のユニットをふた組編成することができる。試合をスタートするユニットと試合を終えるユニットだ。

　相馬（勇紀）を語ることはもはやそうないが、仮に相馬が伊東に代わって試合に入っても、彼らと同じパフォーマンスを発揮できただろう。相馬にもそれだけの力がある。そしてそれが日本の力であり、日本の成功の鍵でもある。日本には個の力でもコレクティブにも違いを作り出せる選手たちがいる。彼らは野心をもって大胆なプレーを展開する。今日の日本の選手たちにはノウハウがあり、自分たちの力を存分に発揮する術を知っている。

　クロアチア戦でも彼らは同じようにプレーするだろう。クロアチアはドイツやスペインと同じ解釈で理解できるチームだ。ヨーロッパのチームであり、コレクティブでスーパーな個を持つ選手はいない。そんなチームに対して日本は容易に問題点を克服できるだろう。

トルシエが言うふた組の攻撃のユニットでも、鍵を握るのはやはり三笘の起用方法か　©Takuya Sugiyama/JMPA

クロアチア戦に勝てる可能性は五分五分

——モロッコとの対戦は避けられましたが、モロッコの方がクロアチアよりも難しかったと言えますか？

トルシエ　その通りでモロッコはコスタリカと同様だ。ディシプリンの欠如と個の力を前面に出したプレー。だからプレーがちょっと予測しにくい。日本はより多くの問題に直面するだろう。

　対してクロアチアは今日もベルギーに苦戦し、危うく敗れるところだった。日本は彼らのレベルでも戦えるし、一試合ではどんなことも実現可能だ。クロアチアを悩ませることもできる。日本の勢いを止める要因は何もない。心理的にも日本は強い。

　もちろんクロアチアは簡単な相手ではない。彼らは4年前の大会のファイナリストだ。ふたつの元世界チャンピオンを倒した日本が、今度は前回大会の準優勝国と対戦する。それだけ日本のレベルが上がったということだ。技術面でも過去に比べ大きく進歩した。とても面白い試合になるだろう。3バックでは伊東を右アウトで使えるし、三笘を左サイドで起用できるのがアドバンテージだ。

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