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「あのW杯の時と雰囲気が似ている…」現地記者がコスタリカ戦後の練習で感じた変化「“温存”久保に熱視線」「勝つことしか考えていない」
posted2022/11/30 20:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
カタールW杯でのスタートは、日本代表にとって過去6大会の中でも最高といえるものだった。
W杯優勝経験国の強豪ドイツに逆転勝利し、選手の士気が高まり、チームも盛り上がった。「ベスト8」という森保一監督の目標であり、日本の悲願は、このチームによって実現されるだろう――。誰もがそう思ったはずだ。それだけのインパクトを与える歴史的な勝利だった。
「自分たちはやれる」という大きな自信を得たドイツ戦
そして、この1勝はチームにとって意味のある勝利にもなった。
過去のW杯のように一定の合宿&調整期間を経て本大会という流れではなく、欧州ではリーグ中盤、日本ではリーグ戦終了後に集合し、短期間での調整を経てチームを仕上げないといけなかった。果たして短期間で整えられるのか、不安はあったはずだが、この勝利で「自分たちはやれる」という大きな自信を得た。吉田麻也は「ピッチに立った選手、ベンチの選手がひとつになれた」と、チームの強固な一体感が生まれたのを感じたという。
勝利によって何かをつかんだという点では、2010年南アフリカW杯の時に雰囲気が似ているかもしれない。あの時、大会前の壮行試合・韓国戦で0-2の完敗を喫し、チームは最悪の状態で現地に入った。直前の親善試合・イングランド戦でシステムと戦術と選手を入れ替え、キャプテンも中澤佑二から長谷部誠に代えた。大会直前の荒療治に反発する声も大きかったが、初戦のカメルーン戦に勝利することで、「これでいいんだ」とチームはひとつになり、戦う集団に変貌していった。
「次、がんばります」とだけ言い残した南野
カタール大会での日本代表もドイツ戦の勝利で、自分たちは「やれる」という思いが確信に変わったことだろう。コスタリカ戦前は、対戦相手の戦術や個々の選手への対応うんぬんよりも吉田が「自分たちの気の緩みや慢心がないようにしないといけない」と注意喚起していたように、自分たちの精神面について言及する選手が多かった。選手の練習取材が行なわれるJFAハウスのミックスゾーンでは、相手を甘く見てはいないが、ドイツ戦の攻守の再現性を実現できれば、まず負けないという空気が醸成されていた。
だが、0-1で惜敗した。