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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「変な意地みたいなものは…ありましたね(笑)」楢崎正剛がいま明かす川口能活への“憧れと対抗心”「GK同士の関係はバチバチでもいい」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/05 17:25
2019年3月、楢崎正剛の引退セレモニーに駆けつけた川口能活。長きにわたって日本代表の正GKの座を争った2人は、強い絆で結ばれていた
“バチバチの関係”も「それはそれで嬉しい」
――守護神の座というひとつの椅子を少人数で争うGKは、トレーニングからライバル同士が肩を寄せ合っていますよね。フィールドプレーヤーよりも濃密な関係にあるのかなと思うのですが。
「濃密ですね。でもそれがいいと思うんですよ。そして、争うのは、ひとつのポジションだからバチバチやればいいんですけどね。同時にチームメイトとして支え合うのも、当然のことで特別なことではない。そのうえで、競い合えばいい」
――“バチバチ”とは。
「練習でもライバルと向かい合う機会は多いし、小さいコートでゲームをしたり、紅白戦をするなかで、相手に勝つことに強いこだわりを見せるということですかね」
――そこで「負けられない」という気持ちを隠すことで、失うものもありますか?
「不必要に表現する必要はないけれど、常にそういう気持ちでいないと成長できないと感じます。ピッチ外ではライバルであっても仲間をリスペクトする気持ちや振る舞いは重要です。でも、ピッチ内では正当な競争を意識してやらなくちゃいけない。リスペクトしすぎるだけではよくないと思います」
――川口さんと楢崎さんが20代前半のころ、日本代表では3人目のベテランGKの存在がいいクッションになっていたと聞いたことがあります。当時はクッションが必要な空気だったのでしょうか?
「そういうときもありましたね。彼がポーツマスに移籍(2001年)するまでは、緊張感があったように思います(笑)」
――若き川口能活は、さきほど言っていた“バチバチ”する空気を発する人だったんですね。
「でも、それはそれで嬉しいというか……。憧れていた人が、自分を意識してくれているんだという気持ちにもなり、光栄だと感じることもありました。勝負にこだわることや、自分のポジションを奪い獲るというこだわりを、一番近くの人が見せてくれた。ごく自然に『この人を上回るには、それ以上の気持ちを持たないと』と思えましたね」
――バチバチした緊張感を醸し出しのもまたリスペクトの形なのかもしれませんね。
「そうですね。もちろん能活だけでなく、ソガは自分にはないタイトルをいっぱい持っていて羨ましいし、だから鹿島には負けたくないというふうにも思っていましたから。負けず嫌いな面を出すこともリスペクトのひとつですし、自分の成長にも繋がると思います」
<後編へ続く>