――いざ代表に入り、その憧れの人とトレーニングするなかで、自分の強みや弱みに気付かされることは？

「自分が勝っていると思うことは、ほぼなかったですね。たとえば、能活の大舞台での勝負強さは常に感じていました。アトランタ五輪、2004年のアジアカップ……。僕がエピソードを話すまでもないけれど、ヒリついた場面で活躍できるメンタリティは敵わないな、と。もちろん『俺も負けない』という気持ちでやっていましたけどね。ああいった場面で印象的なプレーができるというのは、簡単に言えば“持っている”ということになるのかもしれないけど、それを引き寄せるだけの積み重ねがあってこそだと思います」

――どういった姿勢が大舞台での強さを引き寄せているように見えましたか。

「彼は本当にストイックなんですよ。サッカーに対する姿勢や練習などもそうですけど、食生活にしても目玉焼きの黄身を食べないとか、脂ものを摂らないとか、僕には真似できないなと思いましたね。僕もサッカー選手としての覚悟を持ってはいたけれど、『そこまでしなくていいだろう』というくらい徹底していましたから」

2015年、『Number』誌上で行われた2人の対談　©Takuya Sugiyama

メディアが作ったライバル関係も「悪くはない」

――相手のすごさを実感しているからこそ、張り合いたい気持ちも大きかったのではないですか？

「僕もやっぱり負けず嫌いなので、『そういう感じで行くなら、俺は逆のタイプで行くぞ』っていうような変は意地みたいなものは……うん、ありましたね（笑）。『あれだけ吠えるなら、俺は冷静に行こう』とか、『ストイックに食事制限するなら、俺はなんでも食うぞ』とか」

――“逆張り”を考えてしまうと（笑）。当時は『動の川口、静の楢崎』というふうにも言われていましたね。

「まあ、ピッチの外ではいろいろ考えても、実際はやるべきプレー、最適なプレーを選ぶので。『俺もアグレッシブなプレーをしないわけじゃない』とか思ったりもしました。それでも、（メディア上の）そういうイメージも悪くないのかなとも思っていましたね」

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