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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「変な意地みたいなものは…ありましたね(笑)」楢崎正剛がいま明かす川口能活への“憧れと対抗心”「GK同士の関係はバチバチでもいい」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/05 17:25
2019年3月、楢崎正剛の引退セレモニーに駆けつけた川口能活。長きにわたって日本代表の正GKの座を争った2人は、強い絆で結ばれていた
――楢崎さん以外にも中村俊輔選手など、スタメンを外れたベテランが若いチームを支えたことが、この大会を象徴するエピソードになっています。GK陣では、川口さんと楢崎さんのおふたりが若い川島選手をサポートする、という構図だったのでしょうか?
「僕自身、南アフリカ大会が終わったら、代表に関してもひと区切りつけようと思っていたんです。自分にとって集大成の大会にしようと。だから様々な葛藤もあり、大変でしたね。ふわふわしているというか、『俺は何をしているんだろう』という感覚もあって、早く帰りたいと思う瞬間もありました。でも同時に、これが代表での最後の大会のつもりだったから、『このグループで結果を残したい、みんなのために力を尽くしたい』という気持ちも強かった。自分の不甲斐なさと、責務を果たそうという気持ちがぶつかり合っていました。試合に出ず、周囲を支える仕事というのは、『チームのために』という気持ちさえあれば難しいものではありません。だから、あとで周囲にそれを評価してもらったとしても、僕にとっては本望ではないし、複雑な感情になることもあります」
――チームは決勝トーナメントに進出しましたが、パラグアイ相手にPK戦で敗れました。
「トルコに負けた2002年もそうですけど、やれることはやった。でも、本当はもっと上へ行けたはずだ、という感覚があるんです。説明しづらいんですけど……。もちろんパラグアイは南米の強者で、難しい相手です。それでもつけ入るスキはあったはずだし、あそこで終わりではなくもうひとつ上へ行くイメージのほうが強かった。あるいは、それが日本代表のスキだったのかもしれません。とはいえブラジルのような強豪ではなかったし、大きなチャンスだと捉えることも普通だったと思います。だからこそ、後悔が残りますよね。負ければいつだって後悔するものだけど、ただ負けるのとはまた違う感情があったと思います」
――その2010年は名古屋グランパスでリーグ優勝を果たし、楢崎さんもMVPを獲得されました。
「それもなかったら、2010年はしんどいだけで終わっていた。悔しさとかいろんな気持ちをJリーグにぶつけられたと思いますね」
――W杯南アフリカ大会以降は日本代表への選出も辞退されました。
「ずっと張り詰めたものがあったし、リーグ戦がなくても代表の活動があり、シーズンオフもオフ明けに代表合宿があるので、自主トレをしなくちゃいけない。ずっと休みがないのが10年以上続いていたので、生活にメリハリがなかった。自分が現役を続けていくうえで、代表から離れる決断をしました」