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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「変な意地みたいなものは…ありましたね(笑)」楢崎正剛がいま明かす川口能活への“憧れと対抗心”「GK同士の関係はバチバチでもいい」
posted2022/10/05 17:25
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
JIJI PRESS
コロナ禍以前、Jリーグの試合後、代表候補のGKたちがお互いを称えるように会話を重ね、短い時間を惜しむように交流する姿をよく目にした。また、代表などでの交流がなくとも、歳の離れた年長の先輩GKに照れ臭そうに挨拶する若手GKの初々しい様子も印象的だった。GKという仕事を理解し合う同志の特別な空気感が漂っていた。
ゴールマウスというたったひとつの椅子を争う戦いは、フィールドプレーヤーのポジション争いとは違うのかもしれない。加えて、GKは彼らだけのトレーニング時間も長く、ライバルでありながらも濃密な関係性が築かれているように感じる。
それは日本代表の守護神争いでも同様なのだろうか?
強力なライバルたちと日本代表の守護神を競い合ってきた楢崎正剛さんに、その戦いを振り返ってもらった。(全2回の1回目/後編へ)
◆◆◆
“川口能活”は遠い憧れの存在だった
――楢崎さんは長く川口能活さんと代表の正GKの座を争ってきた印象があります。
「正確な出場試合数はさておき、決して僕ら2人だけの争いではありませんでした。たとえば、鹿島アントラーズで何度も優勝しているソガ(曽ケ端準)がいたし、FC東京では土肥(洋一)さんも好セーブをしまくっていた。そんなふうにリーグで活躍しているGKが代表に呼ばれるという現実が、僕にとって緊張感を保つ要因になりました。僕には自信がないからそういう気持ちになるのかもしれませんが(笑)。でも、そういう緊張感、危機感みたいなものが自分を奮起させてくれたと思います」
――川口さんに対してはどんな印象を抱いていましたか? メディアを中心に、代表GKは2人の一騎打ちという空気も形成されていたと感じます。
「僕はそんなふうには思っていませんでしたよ。どんな状況であっても、自分のポジションが確約されていると思ったことはないし、誰にいつ奪われるかわからないという気持ちはずっとありましたから」
――プロ入り前の川口さんは、楢崎さんにとってどういう存在でしたか?
「遠い存在でしたね。初めて見たのは、テレビで見た中学の全国大会です。能活は2年生だったけれど、すごくきれいなセービングをしていて衝撃を受けました。高校時代も清商で大活躍していて……。奈良県でプレーする普通の高校生でしかなかった僕にとって、“川口能活”はとにかく輝いていたし、全然違う世界の人間。とにかく憧れの存在だったと思います」