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「じつは巨人が最下位」「阪神2位、DeNA1位」それでも…なぜ誰もヤクルトを止められないのか? 村上宗隆“衝撃の2カ月間”をまとめてみた
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2022/09/11 17:02
9月9日の広島戦で、野村克也・落合博満超えとなる53号ホームランを放った村上宗隆(22歳)
ベストメンバーが組めない状態が続いたが、コロナ禍の2カ月間を23勝25敗でしのいだ。
振り返ってみると、夏休みの訪れが広島にとっては鬼門だった。7月下旬にマクブルーム、堂林翔太らがコロナで離脱。最大級の衝撃は、8月16日に佐々岡真司監督をはじめ、二遊間を守る菊池涼介、小園海斗、野間峻祥、ブルペンで活躍していた矢崎拓也らが離脱したことで、18日から6連敗を喫してしまう。
23日には、シーズン途中から加入しチームを活性化させていた秋山翔吾も離脱。ようやく8月末になってメンバーが揃ってきたが、8月後半は5勝9敗の成績で、コロナ禍が大きく影響しているのが分かる。
ただし、9月に入ってから状態は上向き。5勝2敗、得失点は20-13。得点生産力はお世辞にも上等とはいえないが、DeNAとの3連戦で3連続完封するなど、投手陣が上向き。阪神と4試合残しているのがCS進出に大きな意味を持ちそうだ。
【5位】巨人「試合中止がシーズンを救った?」
7月下旬、巨人では合計で70人以上に及ぶ大規模なクラスターが発生した。
この影響で7月22日からの中日戦、オールスター明けの29日からのDeNA戦の合計6試合が中止になった。
7月、巨人の状態は最悪だった。7月9日以降、巨人は2勝9敗。7月13日、14日の阪神戦では0対13、0対3の完封負けが続き、15日からの広島戦でも3連敗。18日にはコロナ禍で連敗していたヤクルトにも敗れた。どん底の状態だったところで集団感染が起きたのである。
しかし、6試合の中止によって、勝敗への影響は最小限に抑えられたと見る。もしも、中日とDeNAとの6試合が主力不在の中で開催されていたとしたら、巨人の劣勢は免れなかったはずだ。その意味で、この時期の試合中止は巨人のシーズンを救ったといえるのではないか。
ただし、7月9日からの2カ月に及ぶコロナ期間中の巨人の勝率はセ・リーグ最下位。8月は得失点差マイナス2、月間借金は3つとなった。戦いぶりがどうもチグハグなのである。
光明といえるのは、9月に入ってからチーム力が急に上向いていることだ。阪神戦、DeNA戦ともに勝ち越し。7日のDeNA戦で18対3と大勝したこともあるが、9月の得失点は36―13と投手陣の踏ん張りが目立つ。さらには4番に入った中田翔が7月以降は好調を維持しており、8日までの9月の月間打率は3割を超え、OPSは1.000を超えている。完全復活といっていいのではないか。これに岡本和真が調子を取り戻せば、巨人は危険な存在となる。
ドーム球場を本拠地としていることで消化数が進んでいるのも好材料。14日から16日までは休みで、17日からの9連戦に向けて戦力も整えやすい。このところ、7回クロール、8回平内龍太、9回は大勢の方程式が完成しつつあり、勝負どころでの原辰徳監督の采配に注目したい。